2010年新譜ベスト10/5位~1位
昨日の続き、5位から1位の発表です。
5位: Brian Eno "Small Craft on a Milk Sea"
WARPからの新譜ということで話題になりましたが、前評判に負けず素晴らしい作品だったと思います。
前半三曲目までが"Ambient 2: The Plateaux of Mirror"のような聴きやすいアンビエント作品、四曲目から九曲目がWARPのレーベルカラーに合わせたかのようなビート+音響のトラック、それ以降が"Ambient 4: On Land"のようなダークな音響トラックと主に三つのテーマに分かれた構成になっています。
アンビエントやダーク音響は勿論なのですが、中盤のビートの入ったトラックが特に素晴らしい。若手ミュージシャン二人との即興をエディットしたという今作の魅力をもっとも凝縮した楽曲ではないかと思います。
やはり、年季の入ったミュージシャンが良作を届けてくれるというのは嬉しいですね。
ちなみに、アルバム発表後、収録トラックや未発表曲を演奏したスタジオライヴ映像のサイトが立ち上げられています。今作の出来上がる過程を垣間見れる興味深い映像ばかりです。
Seven Sessions on a Milk Sea
4位: Fenn O'Berg "In Stereo"
収録曲がYoutubeになかったので昨年のライヴの様子を。
フェネス、ジム・オルーク、ピーター・レーバーグによる夢のスーパー電子音響ユニット、フェノバーグが8年ぶりに復活、というのは昨年の大ニュースでありましたが、今年はそれに加えて3rdにして初のスタジオアルバムである今作と、昨年のライヴをエディットした"Live in Japan"をリリースと、非常に精力的に活動していました。
今作は、前作まで見せていたユーモラスな毒はちょっと抑えめに非常にシリアスな、「プログレmeets音響」とでもいうべき傑作だと思います。今年のツアーにも行きましたが、各々が好き勝手に音を出しているようでその実全ての音が意味を持って一つに収束していく様は圧巻の一言でした。企画ユニット的な性格が強いので定期的な活動は望むべくもないでしょうが、それでも息長く続けていってほしいものです。
3位: Emeralds "Does It Look Like I'm Here?"
OPNと同じくEditions Megoより新譜を発表したEmeralds。
彼らの特徴はなんといってもそのクラウトロック(とりわけマニュエル・ゲッチング)的なギターサウンドにあると思います。同時期に発売された、ギタリストのマーク・マクガイアのソロ"Living with Yourself"を聴けばその感覚は理解しやすいはずです。
まだまだUSインディーなどを見れば分かるとおり「ギターロック」的な演奏は若者達の心を掴んでいるようですが、こういう、クラウトロックにはしる若者もいるということは非常に意味のあることであり、「ポピュラーミュージック」の範疇がどんどん広がっていることの証左であるとも思うのです。
2位: Brian Wilson "Reimagines Gershwin"
ブライアン・ウィルソンがガーシュウィンの楽曲を再構成。
かねてよりガーシュウィンの音楽が自分のルーツにあることを明言していたブライアンですが、今回はさらに遺族より依頼されて未完成楽曲の補完まで行うという、彼にとっては非常にやり甲斐のあるプロジェクトであったのではないかと思います。
そして、美しいハーモニーでアルバムの幕を開け、そして閉じる'Rhapsody in Blue'やビーチ・ボーイズ時代を思い起こさせる'I Got a Rhythm'とガーシュウィンの数々の名曲が彼の色に見事なまでに染め上げられているのを見ると、ガーシュウィンの楽曲という手助けを借りて彼自身の音楽遍歴を再構成したようにも思えるのです。
2004年にはビーチ・ボーイズ時代に自らを苦しめた"SMiLE"を完成させ、過去に残してきたわだかまり・トラウマとの決着をつけたブライアンですが、今作は逆に、彼が自身を「ポジティヴに」見つめ直した傑作と言えると思います。
1位: On "Something That Has Form & Something That Does Not"
シルヴァン・ショーボーとスティーヴン・ヘスによる音響ユニットOn。
彼らは毎回、二人で録音したマテリアルを外部に丸投げしてミックスしてもらうという手法をとるのですが、今回白羽の矢がたったのはなんとあのフェネス。
全体としてはマシニックな音響の中に溶かしこめられることにより二人のプレイが際立っているように感じました。その様子は特に後半に顕著で、フェネスの音響とシルヴァンの禁欲的なピアノをスティーヴンのパーカッションが引っ張っていく三曲目、くぐもった音響の上を二人のプレイが漂い続ける五曲目など、肉体的でありながらどこか時間性を感じさせない、ある種の無垢さを獲得していると思います。部品一つ一つは無機質でありながら激しくメランコリック。文句なしに今年のナンバー1です。
と、こんな感じでしょうか。
今年の総括としては最初にも書きましたように電子音響勢が非常に頑張っていた印象で、「音響の年」と言えるかもしれません。また、バカラックやガーシュウィンなど、芳醇なアメリカン・ポップスへと目が向けさせられた一年でもあります。
USインディーなどは良いバンドもいるようですが、早くも行き詰まり感がしているので今年あまり食指が動かなかった、という部分はありますが、まぁそちらの評価は雑誌やピッチフォーク、あるいは他の方々のレヴューにまかせるとして、私の今年のベスト10ディスクとさせていただきます。
あと追加ですが、時間があれば年明けてすぐぐらいにでもベストリイシューCDを何作かえらぼうと思います。
それでは、よいお年を。
5位: Brian Eno "Small Craft on a Milk Sea"
WARPからの新譜ということで話題になりましたが、前評判に負けず素晴らしい作品だったと思います。
前半三曲目までが"Ambient 2: The Plateaux of Mirror"のような聴きやすいアンビエント作品、四曲目から九曲目がWARPのレーベルカラーに合わせたかのようなビート+音響のトラック、それ以降が"Ambient 4: On Land"のようなダークな音響トラックと主に三つのテーマに分かれた構成になっています。
アンビエントやダーク音響は勿論なのですが、中盤のビートの入ったトラックが特に素晴らしい。若手ミュージシャン二人との即興をエディットしたという今作の魅力をもっとも凝縮した楽曲ではないかと思います。
やはり、年季の入ったミュージシャンが良作を届けてくれるというのは嬉しいですね。
ちなみに、アルバム発表後、収録トラックや未発表曲を演奏したスタジオライヴ映像のサイトが立ち上げられています。今作の出来上がる過程を垣間見れる興味深い映像ばかりです。
Seven Sessions on a Milk Sea
![]() | Small Craft On A Milk Sea [解説・ボーナストラック付き国内盤] (BRC275) (2010/10/20) ブライアン・イーノ 商品詳細を見る |
4位: Fenn O'Berg "In Stereo"
収録曲がYoutubeになかったので昨年のライヴの様子を。
フェネス、ジム・オルーク、ピーター・レーバーグによる夢のスーパー電子音響ユニット、フェノバーグが8年ぶりに復活、というのは昨年の大ニュースでありましたが、今年はそれに加えて3rdにして初のスタジオアルバムである今作と、昨年のライヴをエディットした"Live in Japan"をリリースと、非常に精力的に活動していました。
今作は、前作まで見せていたユーモラスな毒はちょっと抑えめに非常にシリアスな、「プログレmeets音響」とでもいうべき傑作だと思います。今年のツアーにも行きましたが、各々が好き勝手に音を出しているようでその実全ての音が意味を持って一つに収束していく様は圧巻の一言でした。企画ユニット的な性格が強いので定期的な活動は望むべくもないでしょうが、それでも息長く続けていってほしいものです。
![]() | イン・ステレオ (2010/04/07) フェノバーグ 商品詳細を見る |
3位: Emeralds "Does It Look Like I'm Here?"
OPNと同じくEditions Megoより新譜を発表したEmeralds。
彼らの特徴はなんといってもそのクラウトロック(とりわけマニュエル・ゲッチング)的なギターサウンドにあると思います。同時期に発売された、ギタリストのマーク・マクガイアのソロ"Living with Yourself"を聴けばその感覚は理解しやすいはずです。
まだまだUSインディーなどを見れば分かるとおり「ギターロック」的な演奏は若者達の心を掴んでいるようですが、こういう、クラウトロックにはしる若者もいるということは非常に意味のあることであり、「ポピュラーミュージック」の範疇がどんどん広がっていることの証左であるとも思うのです。
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2位: Brian Wilson "Reimagines Gershwin"
ブライアン・ウィルソンがガーシュウィンの楽曲を再構成。
かねてよりガーシュウィンの音楽が自分のルーツにあることを明言していたブライアンですが、今回はさらに遺族より依頼されて未完成楽曲の補完まで行うという、彼にとっては非常にやり甲斐のあるプロジェクトであったのではないかと思います。
そして、美しいハーモニーでアルバムの幕を開け、そして閉じる'Rhapsody in Blue'やビーチ・ボーイズ時代を思い起こさせる'I Got a Rhythm'とガーシュウィンの数々の名曲が彼の色に見事なまでに染め上げられているのを見ると、ガーシュウィンの楽曲という手助けを借りて彼自身の音楽遍歴を再構成したようにも思えるのです。
2004年にはビーチ・ボーイズ時代に自らを苦しめた"SMiLE"を完成させ、過去に残してきたわだかまり・トラウマとの決着をつけたブライアンですが、今作は逆に、彼が自身を「ポジティヴに」見つめ直した傑作と言えると思います。
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1位: On "Something That Has Form & Something That Does Not"
シルヴァン・ショーボーとスティーヴン・ヘスによる音響ユニットOn。
彼らは毎回、二人で録音したマテリアルを外部に丸投げしてミックスしてもらうという手法をとるのですが、今回白羽の矢がたったのはなんとあのフェネス。
全体としてはマシニックな音響の中に溶かしこめられることにより二人のプレイが際立っているように感じました。その様子は特に後半に顕著で、フェネスの音響とシルヴァンの禁欲的なピアノをスティーヴンのパーカッションが引っ張っていく三曲目、くぐもった音響の上を二人のプレイが漂い続ける五曲目など、肉体的でありながらどこか時間性を感じさせない、ある種の無垢さを獲得していると思います。部品一つ一つは無機質でありながら激しくメランコリック。文句なしに今年のナンバー1です。
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と、こんな感じでしょうか。
今年の総括としては最初にも書きましたように電子音響勢が非常に頑張っていた印象で、「音響の年」と言えるかもしれません。また、バカラックやガーシュウィンなど、芳醇なアメリカン・ポップスへと目が向けさせられた一年でもあります。
USインディーなどは良いバンドもいるようですが、早くも行き詰まり感がしているので今年あまり食指が動かなかった、という部分はありますが、まぁそちらの評価は雑誌やピッチフォーク、あるいは他の方々のレヴューにまかせるとして、私の今年のベスト10ディスクとさせていただきます。
あと追加ですが、時間があれば年明けてすぐぐらいにでもベストリイシューCDを何作かえらぼうと思います。
それでは、よいお年を。
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