Shing02 + Cradle Orchestra "Zone of Zen"

Artist: Shing02 + Cradle Orchestra
Album: "Zone of Zen"
Label: Palette Sounds/Village Again Asociation
Year: 2016
Tracklist
01. Zone of Zen (3:30)
02. Ampersand (4:36)
03. Twice As Nice (4:33)
04. Jipangu (4:10)
05. Windy Chimes (4:25)
06. Passionista (4:29)
07. Mad Stressor (4:36)
08. Flōwers (5:28)
09. Ephemerald (4:00)
10. Searching For (Remix) (4:51)
11. Zone of Zen (Remix) (3:01)
我が国のアンダーグラウンドHIPHOPシーンで活躍するShing02の活動は2つに大別できます。
1つはソロ作品に代表される、コンシャスなリリシスト/MCとしての活動、そしてもう1つは2010年に急逝したNujabesとの活動などに代表される、ポップなHIPHOP作品への客演です。
私自身、今年に入ってから改めて日本語HIPHOPを掘り始めたところで、彼の作品もまだまだ存じていないのですが、新年が明けて早々にリリースされた、Cradle Orchestraとの共同作品"Zone of Zen"はこの分類で言えば後者に該当すると思います。
プログラミングされたビート/多少のトラックとバンド演奏を共存させることで作られた本作は、とにもかくにもピアノ・オリエンテッドな作品と言えると思います。
本作にはAyumi Katoとm-takuという2名の鍵盤奏者が招聘されており、前者はアコースティックピアノを、後者はキーボードを担当しています。
葉加瀬太郎や久石譲あたりを連想させるような、オリエンタルな風情あふれるメロディを、彼女たちの鍵盤が反復しながら発展させていくことで楽曲の骨子ができているものが多いですね。(06、10など一部の楽曲ではその役割をギターが担う場合もあり)
手法としては特筆して先進的/前衛的な点はありませんので、要はこのメロディや人懐っこい部分を好きになれるかどうかが肝要となる作品だと思いますが、個人的には気安く聴くことができて割りと気に入っています。
01、02、08、09などのアコースティックピアノが印象的な楽曲では、クラシックやエレクトロニカなどからの影響が聴取できるとともに、ピアノの残響がクリアに録音されており、とても美しい楽曲に仕上がっていると思いますし、03でのアンビエント風味、04での和楽器の導入(タイトルそのまんまですが)、05や06の熱くソウルフルな展開(06からはややラテンの影響も感じられます)、07のノイジーで攻撃的な雰囲気、10でのロックなアコースティックギターとグリッチーなビートなど、楽曲ごとに色々なスタイルを見せてくれるためアルバム全体通してヴァラエティ豊かで、だらだらとしたような所はありません。
HIPHOPが本来的に持つドープなサイケデリアについては、おそらく最初から志向していないのだろうと思いますが、楽曲は非常によく練られており、Shing02の軽めの声質も非常によくマッチしております。
1曲がおおよそ3~5分、アルバム全体で11曲48分と、コンパクトにまとめているのも好印象です。
ラストが01のリプライズ(リミックス)で終わるということで、ちょっぴりコンセプチュアルな雰囲気でアルバムが終わるのもまた良いですね(狙ったわけではなさそうですが 笑)
Shing02に先鋭性や攻撃的な姿勢を求めるファンには不評な気もしますが、ポップなHIPHOPとして気軽に、くつろいで楽しめる良い作品だと思います。
気安く聴けるが故に、結構今年通して聴いちゃいそうだな(笑)
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