Tigran Hamasyan "Luys I Luso"

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Artist: Tigran Hamasyan
Album: "Luys I Luso"
Label: ECM Records
Year: 2015

Tracklist
01. Ov Zarmanali (1:26)
02. Ankanim Araji Qo (5:09)
03. Ov Zarmanali - Var. 1 (13:10)
04. Hayrapetakan Maghterg (3:51)
05. Bazum En Qo Gtutyunqd (6:42)
06. Nor Tsaghik (7:38)
07. Hayrapetakan Maghterg - Var. 1 (1:45)
08. Hayrapetakan Maghterg - Var. 2 (4:25)
09. Havoun Havoun (4:34)
10. Voghormea Indz Astvats (9:33)
11. Sirt Im Sasani (3:46)
12. Surb Astvats (5:45)
13. Sirt Im Sasani - Var. 1 (4:04)
14. Orhnyal E Astvats (4:10)


アルメニア人ジャズ・ピアニスト ティグラン・ハマシアンの新作が、なんとECMより発表されました。
今年頭にはNonesuchからも"Mockroot"という作品を発表したばかりで、そちらはまるで2013年の衝撃作"Shadow Theatre"の続編とでも言うべきもの(レーベルカラーに合わせたのか前作よりは多少禁欲的な雰囲気があったように思いますが)でしたが、今作はガラリと趣向を変え、故郷アルメニアの宗教音楽を、なんと現地の聖歌隊(イェレヴァン室内楽聖歌隊/Yerevan State Chanber Choir)とソロピアノのための協奏曲(?)にアレンジしたものとなりました。

もともと彼はジャズ(キース・ジャレット)を通して故郷の音楽を再発見したという過去を持っており、アルメニアだけでなく周辺諸国の古謡/民謡の蒐集に熱心であったようです。
今作はその、まるでバルトークにも通底するライフワークの最初の成果と言うことができるうえ、内容的にも非常に素晴らしいものに仕上がっています。

ECM恒例の「5秒」の後に、ピアノでぽつりぽつりとつぶやくように演奏される'Ov Zarmanali'からアルバムはスタートします。
彼の奏でる、いかにも東欧らしい旋律は、西欧の音楽に慣れた我々の耳には不協和に聴こえる瞬間も確かにありますが、そういった部分も含め非常に神秘的なアンビエンスを湛えています。
また、聖歌隊の方は男女混声で非常にポリフォニックな歌唱を聴かせてくれます。テノールによる戦慄のドローンや、祈りのようなソプラノなど、複数の歌声/ラインが豊かに絡み、神聖さと残酷さを併せ持つかのように美しい倍音を生じながら響く様は、ECM的な残響重視の録音により一層瑞々しくその魅力を放っています。

楽曲は5世紀~20世紀と広範な時代から選曲されたようですが、やはり宗教音楽/教会音楽ということもあってか、対位法的であり、またモーダルな雰囲気を強く湛えています。
ティグランは全体的には割りと礼儀正しく(?)、原曲の神聖性を損ねないようにアレンジしているように見受けられますが、6曲目など、楽曲によってはプリペアド・ピアノを使用しており、硬質な響きが上手く楽曲に溶け込んでいるのには驚かされます。

また所々彼の以前の作品で聴いたことのあるかのような、デジャヴを覚える瞬間があり、彼がいかに巧みに、自身の音楽に故郷の音楽が持つ特性を投影しているかを逆説的に証明しているかのようでもあります。
アルバム中盤~後半にかけ、徐々に演奏が(ジャズ的な)熱を強めていきますが、それでも楽曲は演奏の熱に飲み込まれることなく、どこか寒々しく禁欲的な空気をはらみ続けます。非常に絶妙なバランスであるように思えますね。

まさに自身のルーツを深く見つめることから生まれた作品だと思います。
装丁も通常のECM作品とは違い、ブックレット付きのデジパックでまるで本のような作りをしています。内容と合わせ、非常にトータルな作品作りをしていることを感じさせます。
本作の構想自体は長年暖め続けてきたもののようですが、世間からの彼に対する注目度が高まっているタイミングで、そしてECMというこの音楽にまさにピッタリのこだわりをもったレーベルという最良の相棒と組んで、まさに満を持しての発表と言えるでしょうし、内容的にも状況的にも、彼が本作(ひいては故郷の音楽)に並々ならぬ自身を抱いているのはしっかりと感じ取ることができます。

ECMからは今作だけでなく、同じくアルメニアの伝統的な音楽を現代的なジャズコンボ+エレクトロニクスにより再構築するプロジェクトも発表予定とのことですが、おそらくそちらは今作と対をなすような、表裏一体の作品となることでしょう。
今から楽しみで仕方がありません。


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