tricot "A N D"

Artist: tricot
Album: "A N D"
Label: Bakuretsu Records
Year: 2015
Tracklist
01. Noradrenaline (4:04)
02. 走れ (3:33)
03. E (3:38)
04. 色の無い水槽 (2:56)
05. 神戸ナンバー (3:43)
06. 消える (4:36)
07. ばい~ん(AND ver.) (4:14)
08. 食卓 (4:15)
09. 庭 (3:19)
10. CBG (3:12)
11. QFF (6:56)
12. Break (3:27)
最近の若手邦楽ロックバンドはほんと色々上手くてすごいなぁ、と素直に関心することしきりです。
3人組ガールズロックユニットtricot(トリコ)がこの3月にドロップした最新作は、1st"T H E"で見せた青臭い衝動性からは予想もつかないほどによくデザインされた、まさに「作品」と呼ぶに相応しい仕上がりだと思います。
「変拍子」を自分たちの音楽におけるキーワードとしている彼女たちですが、実は先の1st発表後、唯一の男性メンバーであり、またドラマーでもあったkomaki♂が脱退するというアクシデントに見舞われています。
変幻自在の、という言葉が非常に似合う彼のドラムスタイルは、女子3人の演奏に対し常に攻撃的な程に挑み、瞬間瞬間で拍子を分解し、また、ビートの頭を(聴き手に)誤解させるかのように作り変える、まさにこのバンドに相応しいものであったため、そのダメージもかなり大きかったのではないかと予想します。
リズムにこだわったアプローチを見せてきた彼女たちが、次のドラマーに誰を据えるのかということは、ファンの多くが注目していたところだろうとは思いますが、逆に彼女たちは特定のドラマーを立てず、5人のドラマーに各楽曲を担当させるという形で新作"A N D"を制作したのです。(1曲のみkomaki♂在籍時の録音のようですが)
選ばれたのは千住宗臣、刄田綴色、BOBO、山口美代子、脇山広介という5人ですが、それぞれのドラミングの特色が割りとはっきり楽曲に現れているように思います。
個人的にはハットやシンバルを軽快に入れてくる千住さんのプレイが好みでした。
また、7及び11曲目にはPe'Zや第1期の東京事変にも参加しているH Zett M(ヒイズミマサユ機)さんが参加しています。特に7曲目でのリリシズム溢れるイントロから、緊張感溢れるバッキング(絶妙なカウンターライン/フレーズを添えながら)に転じるプレイは流石という感じですね。
この通り、komaki♂の抜けた穴を豪華なサポート陣で埋めたわけですが、それだけでなくソングライティングにも向上が見られます。
楽曲中ではもちろん、全体通しても抑揚がはっきりとしており、1stのややもすれば金太郎飴的な雰囲気はなく、「アルバム」として1つの良い作品を作ろうという彼女たちの意気込み/チャレンジ精神が見て取れるようです。
先述のH Zett Mのピアノを前提とした楽曲を作ることが出来るようになったほか、9曲目などではサンバも取り入れてリズム中毒者っぷりを披露していますし、バラード系の曲ではより静と動の対比が巧みになっていると思います。
個人的にはthe band apartやSpangle call Lilli line、そしてZazen Boysなどの、00年代の重要な邦ロックバンドから美味しいところをとってきたような印象で、それをやってるのが年端もいかない(?)可愛らしい女の子達だというのが非常に面白いと感じています。
本作もかなりの力作だと思いますが、これから先にまだまだ期待したくなるバンドですね。是非聴いてみてください。
ちなみに、初回限定盤には彼女たちの変名ユニット期待外れにも程GIRLの楽曲'御尻爆弾'を収録したボーナスディスクがついてきます。こちらは本編とタイトル(笑)からは予想もつかない、素直でストレートな良曲ですので、可能であればこちらをおすすめします。
今作に参加している5人のドラマーを同時に共演させた、9曲目のスタジオセッション。クール!
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