Wayne Shorter "Odyssey of Iska", "Moto Grosso Feio"

wayneshorter-ooi.jpg


Artist: Wayne Shorter
Album: "Odyssey of Iska"
Label: Blue Note
Year: 1970

Tracklist
01. Wind (8:00)
02. Storm (8:14)
03. Calm (3:22)
04. De Pois do Amor, O Vazio (11:30)
05. Joy (8:57)


wayneshorter-mgf.jpg


Artist: Wayne Shorter
Album: "Moto Grosso Feio"
Label: Blue Note
Year: 1974

Tracklist
01. Moto Grosso Feio (12:26)
02. Montezuma (7:50)
03. Antiqua (5:22)
04. Vera Cruz (5:10)
05. Iska (11:20)


今年(もまだ1月ですが…)、神秘主義ジャズ・サキソフォニスト ウェイン・ショーターの"Odyssey of Iska"がリイシューされました。(国内盤はなんと27年ぶり!)
実を言うと2012年末頃には74年の"Moto Grosso Feio"もひっそりとリイシューされておりまして、(こちらは初国内盤)「マイルス・バンド脱退直後/Weather Report前夜/ブルー・ノート(最)後期」という、ショーターの人生の中でも特に重要な時期に吹き込まれた2作に、容易にアクセスできるようになったというのはとても喜ばしいことだと思います。

さて、本人曰く「忘れてた」とのことで"Odyssey of Iska"から実に4年も遅れて発表されることとなりましたが、順序としては、まずは"Moto Grosso Feio"が録音されたようです。
セッションの間隔自体は4ヶ月程度だったこともあり、2作ともに作風としては共通しています。初期のWRにもつながっていくような、アブストラクトな感触の強いサウンドや中南米の音楽への目配せ、そしてフリー・ジャズや場合によっては音響的ともとれるアプローチにより空間にバンドの「音」そのものを滲ませるように配置していくその様はまるで水墨画のようですらあります。

次に相違点ですが、"Moto Grosso Feio"にて、ショーターは実に奇妙なアプローチを採っています。
例えば、マイルス・バンドで共演経験のあるピアニスト チック・コリアにはなぜかピアノでなくマリンバやパーカッション、そしてドラムスなどを担当させた他、ジョン・マクラフリンにはエレキ・ギターでなく12弦アコースティック・ギターを持たせるなど、各人が経験の薄い、またはまるで経験のない楽器を持たせているのです。
このアプローチについて、一般に言われるのは「手癖を嫌い、素直なフレーズ/演奏を求めて」の所作であるという説ですが、全く違う楽器を持たされたチック・コリアはともかく、マクラフリンやロン・カーターについては細かい違いはあれ、一応自身のフィールドの楽器を持たされています。
楽曲に対するアプローチが十分に体得できてない状態でそのような「半端にフィールド内」の楽器を持たされると、普通は逆に手癖が出てしまうように思います。
「手癖を避ける」ことが目的であればそれこそマクラフリンにベースや、ロン・カーターにギターをあてがえばいいのに、これはあまりにも不自然です。チックにしても、調べてみると過去にマーチングバンドで太鼓を叩いた経験があるそうなので、やはり「手癖回避」説には疑問が残ります。むしろ、メンバーを手癖が出やすくなるような状況に置いている。

となると、実は逆の目的があった、なんてことはないでしょうか。
要は「各人の手癖的なフレーズで楽曲を構築したかった」ということ。
そういう視点でもって"Odyssey of Iska"と聴き比べてみると、"Moto Grosso Feio"の方はなんとも分かりやすいというか、かなり固まったフレーズが各所で提示されたり、いかにもなブレイク(1・2曲目なんか特に顕著ですね)が配置されたりしています。
"Odyssey of Iska"はメンバーこそかぶっていませんが(ロン・カーターのみ)、各人の担当楽器をそのまま持たせて演奏しておりますので、演奏自体に危ういところもなく、各人自由に伸び伸びとアブストラクトな空気を作り出しています。
完成度、という点では明らかに"Odyssey of Iska"の方が上ですね。
先述の通り、空間に音が滲んでいくかのような音響的な感覚が非常に強く、後のWRに至る音楽性の萌芽どころか、この時点で一旦の完成をみているのではないのか、というほどに妖しく美しい作品として彼のディスコグラフィの中でもとりわけ異彩を放つ傑作と言えるでしょう。

ただ、"Moto Grosso Feio"の方は「手癖」を重視するそのコンセプトにより、独特の「間」が生まれているように思います。
各メンバーとしてもいくら普段の楽器でないとはいえ手癖で弾き倒すわけにもいかなかったのでしょう。ところどころに次の展開を思案するような、あるいはショーターの動きを待つかのような「空白」が生まれています。
普通の楽曲であればぎくしゃくとした印象を与えるだけの、失敗としかとれなさそうなこの所作が、この「水墨画」的な楽曲の中では魅惑的/神秘的な「間」として機能しているのです。

ここから先は妄想ですが、もしかするとショーターは"Moto Grosso Feio"セッションについては世に出すつもりはなかったんではないでしょうか。
"Odyssey of Iska"の前哨戦、あるいはヴァリエーションということでアプローチを変えて録音してみたものの、その時にショーターが思い描いていたサウンドは"Odyssey of Iska"の方が達成できていたため、こちらを発表した。
が、後年にエンジニアがテープを発掘し、その流れで再度音源に触れたショーターは、例えば前述のような「"Odyssey of Iska"にはない、"Moto Grosso Feio"独特の魅力」を感じ、これはこれで発表すべき、なんて気分になった…なんて流れ、案外有り得そうに思います。(笑)

まぁ、真実はどうあれ、いうなれば「音響ジャズ」「水墨画ジャズ」という音楽に、真正面から取り組んだ"Odyssey of Iska"と、トリッキーな変化球的にアプローチした"Moto Grosso Feio"はどちらをとっても間違いなく名作ですし、これらの楽しみ方としては、この音響的/水墨画的なサウンドに没入すると同時に、双方のサウンドの微妙な差異を楽しむのが正解であるように思います。
やはり、音楽に「たった一つの冴えたやり方」はない、ということですね。


'Calm'("Odyssey of Iska"より)


'Moto Grosso Feio'("Moto Grosso Feio"より)



オデッセイ・オブ・イスカオデッセイ・オブ・イスカ
(2014/01/22)
ウェイン・ショーター

商品詳細を見る


モト・グロッソ・フェイオモト・グロッソ・フェイオ
(2012/11/21)
ウェイン・ショーター

商品詳細を見る
スポンサーサイト
プロフィール

vuoy

Author:vuoy
音楽好きです。
情報に間違いなどありましたらコメント欄で結構ですので気軽に連絡ください。
Last.fm
twitter

【注意事項】
まれに、当blogの記事をオークションの商品説明に引用またはURL貼付されているページを見ることがあります。
当blogの記事はあくまで個人の感想であり、ミュージシャン本人以外の利益に供する目的はありませんので、商用目的での無断引用/URL貼付はご遠慮願います。
どうしてもという場合には、twitterなどでご相談いただければ検討しますので何卒ご理解いただきますようよろしくお願いします。

アクセスカウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
vuoy's Profile Page
Twitter
検索フォーム
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
257位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
59位
アクセスランキングを見る>>
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR