Robert Glasper Experiment "Black Radio"

Artist: Robert Glasper Experiment
Album: "Black Radio"
Label: Blue Note
Year: 2012
Tracklist
01. Lift Off/Mic Check [feat. Shafiq Husayn] (3:57)
02. Afro Blue [feat. Erykah Badu] (5:07)
03. Cherish the Day [feat. Lalah Hathaway] (5:51)
04. Always Shine [feat. Lupe Fiasco & Bilal] (5:22)
05. Gonna Be Alright (F.T.B.) [feat. Ledisi] (6:11)
06. Move Love [feat. King] (3:18)
07. Ah Yeah [feat. Musiq Soulchild & Chrisette Michele] (5:08)
08. The Consequences of Jealousy [feat. Meshell Ndegeocello] (6:31)
09. Why Do We Try [feat. Stokley] (6:31)
10. Black Radio [feat. Mos Def] (5:25)
11. Letter to Hermione [feat. Lupe Fiasco & Bilal] (4:51)
12. Smells Like Teen Spirit (7:24)
HIPHOP以降、もはやブラック・ミュージックをブルーズだ、ジャズだ、ファンクだ…などとジャンル分けし、定義することなどできないし、そんなことをする意味もないように思います。
ジャズの名門であるブルー・ノートが、HIPHOPやR&Bミュージシャンとの共演で知られるロバート・グラスパーの、それもこのような作品を発表したことは、その証左と言えるのではないでしょうか。
Robet Glasper Experimentという、いかにも挑戦的なバンド名でのフル・レンス第1作目(一応ジャズ活動としてのTrioとのスプリット的な作品を残してはいますが…)となった今作は、エリカ・バドゥやミシェル・ンデゲオチェロなどの、R&B畑のシンガーを多くゲストに迎えた、「歌モノ」と読んでも差し支えなさそうな作品となっています。
音は非常にスムースでレイドバックした、HIPHOPビートと歌の絡みが印象的ですし、また、参加している面々からも90年代のネオソウルな香りがぷんぷんと漂っており、あの時代のブラック・ミュージックを好むリスナーには、まずたまらない作品であることでしょう。勿論、私も例に漏れずその一人であります。
では、これが90sネオソウルの焼き直しかというと、そうではありません。
「HIPHOPとジャズの融合」というアイデアは実際のところ結構手垢のついたものだと思いますが、この作品はそう単純なものではない。
基礎となるトラックは確かにHIPHOPマナーに沿ったものであります。
ドラマーのクリス・デイヴは、先日見事に復活したD'Angeloのツアーでの力強いドラミングが印象的なミュージシャンですが、今回はそういった爆裂ドラムは見られず、かなりストイックにビート/パルスをキープし、ミニマルに反復させていますし、ベースも「間」をタップリととった、スモーキーな感覚を有しています。
しかし、そこに絡むグラスパーのピアノはもっと自由なものであるように感じます。
ジャジィな感覚も有しながら、HIPHOP的に反復させてみたり、あるいはアンビエントなサウンドスケープを構築しながらリズム隊と有機的に絡んでみたりと、一つのジャンルにくくることを拒むように、奔放に、楽しそうに鍵盤を奏でていくのです。
全体を通して彼のピアノには大々的にフォーカスがあてられていません。
しかし、明らかにこの作品の空気を決定しているのは魅力的なゲストヴォーカル達ではなく、彼の鍵盤なのです。
非常に危ういバランスではありますが、とりあえずは実験(experiment)は成功と言えると思います。
今作自体、2012年の作品の中でも象徴的なものとなると思いますが、「このバンドはきっと素晴らしい名盤を創り上げてくれる。」、そんな予感を強く感じさせるデビュー作だと思います。
![]() | Black Radio (2012/02/28) Robert Glasper 商品詳細を見る |
スポンサーサイト