Simon Finn "Pass the Distance"

Artist: Simon Finn
Album: "Pass the Distance"
Label: Mushroom
Year: 1970
Tracklist
01. Very Close Friend
02. The Courtyard
03. What a Day
04. Fades (Pass the Distance)
05. Jerusalem
06. Where's Your Master Gone
07. Laughing 'til Tomorrow
08. Hiawatha
09. Patrice
10. Big White Car
サイケの世界広しと言えど、天然モノの狂気を内に孕んだ人間というのはそう多くありません。
ぱっと思いつくところではシド・バレットくらいのものでしょうか。正直彼には、何人のミュージシャンが束になっても勝てないような気がします。そもそも勝ち負けの世界とは無縁の人のような気がしますが。
でも、彼の右に出るとまではいかなくとも、せめて横に並んでもおかしくない人を挙げろ、といわれれば私は間違いなく、このサイモン・フィンの名をいの一番に上げると思います。
この作品は、彼が1970年に発表した作品で、2005年にCurrent 93のデヴィッド・ティベットに"再発見"され、衝撃の復活を遂げるまでは唯一作であり、また「アシッド・フォーク幻の作品」とされていたものです。近年はこのような作品の発掘・再発が進み、容易に入手することができるようになりました。大変素晴らしいことだと思います。
ちなみにこの作品を発表後、姿を消した彼には自殺説が付きまとい、長らく真実だと思われてきましたが、楽曲を聴いてみればそれにも納得してしまうと思います。
基本的にサイモン・フィン自身のよれよれのギター&ヴォーカルをゲストミュージシャンの様々な音が彩るように作られていますが、一曲一曲が異常としかいいようがありません。
中近東風のメロディーや極端な音量バランスなど、おかしな要素は挙げればきりがありませんが、何よりも異常なのはやはりサイモン・フィン自身のギターと歌です。
よれよれで、適当にギターをかき鳴らし、がなっているだけなのですが、普通の人がやる「ふり」ではなく、明らかにキ○ガイが普通にやろうとしてるのに、できない感じのそれなのです。
特にM-5'Jerusalem'を聴けばそれがはっきりと分かると思います。終盤サイモン・フィンは本領発揮、というか本性を垣間見せます。
…夜中に一人では聴きたくないです。
ちなみに、ジャケットは音に反してのどかですが裏ジャケを見ると、道を歩く彼らを前から捉えた構図が描かれております。

…世界というものは非常に危ういもので、立ち居地/視点がちょっと変わっただけで我々は飲み込まれ、殺されてしまうのかもしれません。
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