The Love Experiment "The Love Experiment"

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Artist: The Love Experiment
Album: "The Love Experiment"
Label: Sweet Soul Records
Year: 2016

Tracklist
01. Prelude (2:05)
02. Slow (5:09)
03. School Girl (4:00)
04. Heejin's Theme (2:00)
05. Friends (5:02)
06. Interlude (0:53)
07. Waiting (4:25)
08. Beautiful (6:46)
09. Outro (1:12)
10. Love Experiment Jam (Tehbis Flip) (1:46)
11. Friends Re: Construction (5:02)
12. Theme & Variation (1:17)
13. Want Your Love (JPN MIX) (4:45)


NYのフューチャー・ソウル・バンド The Love Experimentのデビュー作が日本のSweet Soul Recordsからリリースされました。
セルフタイトルの本編(1~9曲目)に日本オンリーのボーナストラック4曲を収録した形となっています。(今のところ日本のレーベルのみのリリースなので、「日本オンリー」ってのもおかしな話な気がしますが…)

マイルス・デイヴィスやビリー・ホリデイ、ジョン・コルトレーンからJディラ、Flying Lotusなどに影響を受けたと語る彼らのサウンドはど真ん中のネオソウル風味です。
ドラムのチャールズ・バーチェルによる、細かい譜割りで一拍もたったような感触を残すJディラ直系のビートや、ヴォーカルのキム・メイヨーによる初聴ではエリカ・バドゥと勘違いしそうな歌声などは正に、と言った風情で聴いていて非常に安定感があります。

ブラスはヒプノティックな(Dの"Voodoo"的な)重心低めのヴァンプや、わざとらしいほどにメロウなラインを加えつつ、3曲目や13曲目のソロなどではモダン・ジャズやフュージョンなどの空気も感じさせる幅広さを持っていますし、鍵盤もピアノやシンセ、ローズを使い分けて様々なテクスチュアで楽曲を彩っています。
ピアノが前面に押し出された1曲目の冒頭など、ソウル/R&Bのレコードらしからぬアーティスティックな始まりで、一瞬CD間違えたのかと驚きました。
もちろん、ビートが入ってくるとその誤解はすぐさま解けたのですけど(笑)

根本的なスタイルはネオソウルですが、そこに加わるストリングスアレンジや電子音などには、クラシックやチェンバーポップ(またはソフトロック)、あるいはエレクトロニカなどからの影響と同時にリーダーのバーチェルのアカデミックな素養を感じさせます。(実際にニューイングランド音楽院やハーバード教育大学院で学び、現在は教鞭をとることもあるとか)

全体的には手堅くまとめてきた印象のある作品ですが、個人的に特徴的だと思うのは'Prelude'、'Interlude'、'Outro'と冠された3曲が暗示するトータルなアルバム作りと、1曲の間で大きく曲調が変わる楽曲展開です。
2曲目や3曲目などに顕著ですが、ネオソウル風味のゆったりした楽曲から、いきなりビートがバウンスし始めますし、その後すぐの4曲目に平然と映画音楽風のストリングス主体のインストを挿入するのにも結構驚かされます。
8曲目などはその真骨頂といった感じでアグレッシヴなパートと、スローダウンした瞑想的なパートを行き来しながら、ラストはネオソウルに帰結するという、かなり壮大な作りになっています。

そして、この2つの要素からふと思い浮かぶのはマーヴィン・ゲイの"What's Goin' on"です。
あの作品が、ソウル/R&Bがアートとしても通用することを証明した最初の作品だとするならば、今作は間違いなくその子孫と言えるでしょう。
バンド名にもなっているとおり、「愛(love)」がこのバンドの基本テーマだと言うのもマーヴィンっぽい気が(笑)

ボーナストラックを除くと30分程度のややライトな仕上がりですので、ぜひ重厚なフルアルバムを作ってみてもらいたいものです。
割りとメンバーが流動的なコレクティヴのようなので、ぜひ人脈をフルに活かしたゲストてんこ盛りでお願いします(笑)


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James Blake "The Colour in Anything"

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Artist: James Blake
Album: "The Colour in Anything"
Label: Polydor
Year: 2016

Tracklist
01. Radio Silence (4:00)
02. Points (3:31)
03. Love Me in Whatever Way (5:03)
04. Timeless (4:22)
05. F.O.R.E.V.E.R. (2:40)
06. Put That Away and Talk to Me (3:57)
07. I Hope My Life (1-800 mix) (5:40)
08. Waves Know Shores (2:55)
09. My Willing Heart (4:02)
10. Choose Me (5:38)
11. I Need a Forest Fire [feat. Bon Iver] (4:17)
12. Noise Above Our Heads (5:03)
13. The Colour in Anything (3:33)
14. Two Men Down (6:01)
15. Modern Soul (5:32)
16. Always (5:04)
17. Meet You in the Maze (4:55)


先週、突如リリースされたジェイムス・ブレイクの新作は、彼が着実に、そして劇的に、音楽家としての高みに至ろうとしていることを示す好盤と言えるでしょう。

自身の歌声を、オートチューンを発声器官のように自由自在に扱って捻らせ/捩らせながら、ダブ由来の残響が形作る空間/虚空に投げ込んだ1st"James Blake"以降、彼の動向は常に注目されていました。
続く2nd"Overgrown"で、彼は1stでお披露目した歌声を丸裸にしながら、1st以上にR&B/ソウル化した楽曲に載せて歌うことで、シンガーとしての自分を試しているような素振りもあったように思います。

彼の音楽の中にはブルーズやゴスペルなどに対する愛が常に感じられました。
それは、三行詩的な歌詞構造や一処から動けない/動かないような係留感覚、あるいは上ずりながらスピリチュアルに舞い上がる声のサスティンなど、様々な形で楽曲の中に忍ばせてあり、我々が彼の音楽を聴いて感じる虚無感や、あるいは高揚感の大きな原因だったように思います。
そして、本作ではそれがよりはっきりと現れています。

まずもって、元々アルバム・タイトルにも使用される予定だった冒頭の'Radio Silence'からして驚きです。
なんといっても、生のピアノに向かいながら歌うブレイクの姿がはっきりと思い浮かぶのです。
さらに歌声が多重録音で幾重にも重ねられ、空間を瞬時にスピリチュアルな色彩で塗りつぶしていく様には圧倒されました。
歌声自体は、2ndのように生歌オンリーというわけでなく、1stでも見られたオートチューンの使用が復活しています。
彼は自身の生の声と、オートチューンで変化させた歌声を用いて、音響も多層化させているのです。
2ndまで徐々に進行していたSSW化が、ここにきて一気にモノになったような印象を受けます。

そして、その歌声が載せられる楽曲は、相変わらず余計なものをそぎ落とし、極限までミニマルに構築されたものばかりです。
この辺りはやはりポスト・ダブステップを出自とするところから来るのかと思いますが、週明けに同じく突然発表されたRadioheadの新作"A Moon Shaped Pool"(ミニマルだという評を結構見る気がします)に比べても格段に抑制の効いた音作りだと思います。
楽曲は、ドローン状の音響や執拗に繰り返されるリズムトラックやシンセなどの音が抜き差しされる以外の変化をあまり見せません。
そんな中を、「虹色の歌声」とでも呼びたくなるほどに様々なテクスチュアを付与された歌声は、時に後ろ向きな湿り気を帯び、あるいは感情の赴くままに暴発し(ブレイクがシャウトしている!)ながら、彼の感情を存分に、隅々にまで染み渡らせていきます。

本作を端的に言い表すとするなら「トラックでモーダルな(?)ガイドラインを提示した上で、好き放題に歌っている」という表現になるかと思いますが、それがなんとも様になっているのは彼にシンガーとしての実力が備わってきたことの証拠でしょう。
オートチューンの使用や、共同作業者のジャスティン・ヴァーノン(Bon Iver)の歌声などに隠れてしまっていますが、1stや2ndに比べると随分歌うのが巧くなったように感じました。
(ちなみに、歌ってはいませんが数曲でフランク・オーシャンも作曲に携わっています)

まだまだ最高傑作、というには早いかなという気がしますが、以前どこかで言ったとおり、個人的に彼は5thあたりで最高傑作を生み出すと思ってますので、本作が2ndからの着実な進歩が感じられる内容であったことに安心しました(笑)




Prince "Lovesexy"

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Artist: Prince
Album: "Lovesexy"
Label: Paisley Park/Warner Bros.
Year: 1988

Tracklist
01. Eye No (5:47)
02. Alphabet St. (5:38)
03. Glam Slam (5:04)
04. Anna Stesia (4:56)
05. Dance on (3:44)
06. Lovesexy 85L48)
07. When 2 R in Love (4:01)
08. I Wish U Heaven (2:43)
09. Positivity (7:15)
(US盤は全部の曲がトラッキング無しでつながっています)


昨日(4月22日)の朝、目が覚めたところに一つの驚くべきニュースが舞い込んできました。
それは、プリンス・ロジャー・ネルソンこと殿下が57歳という若さで突然の死を迎えたというニュースで、先のデヴィッド・ボウイの時と同等か、もしかすると(殿下の方が若かった分かもしれませんが)それ以上のショックを受けました。

昨日から追悼の意を込め、殿下の作品を1stから聴き直していますが、改めてどの作品も素晴らしく、その才気が見事に具現化したものばかりでありまして、78年のデビュー以来コンスタントに作品を発表し、さらには膨大なアウトテイクが残っていると噂される程にワーカホリックな彼であっても、もはやこれ以上純粋な意味での新作は生まれ得ないということに改めて悲しみを覚えます。
今回はレビューでの追悼もあわせてと思い、88年の名作"Lovesexy"をご紹介させていただきたいと思います。

さて、まずこの作品、何よりもまず印象深いのはジャケットかと思います。
全裸に十字架のみ下げて恍惚の瞳でどこかを見つめる殿下…どう見てもソッチ系の人にしか見えませんが(汗)、これは『神の前に自分の全てを曝け出す』ことを意図したジャケットとのことで、意外や意外(失礼)随分真面目なジャケットだったのですね。

この時期(というかこれ以降というか)の殿下は、所属レーベルであるワーナーが契約を盾に作品作りに口をはさむなどしたことで関係が悪化してきた頃でして、実はこの作品の直前に"The Black Album"と題した過激でグルーヴ・オリエンテッドな作品を発表しようとした経緯があります。

"The Black Album"はブート流出などもあって最終的に94年に正規で発表されることとなりましたが、改めてそちらを聴いてみると驚くほどアグレッシヴで、"Sign O' the Times"まで彼の作品から感じられたポジティヴな雰囲気は全く感じられません。
唯一、本作にも改めて収録された'When 2 R in Love'こそ美しいバラード作品ですが、その他は全て硬質なビートが先導するファンキーな曲ばかりです。
歌詞も、ものによっては当時の関係者を口汚く罵るものであったりと攻撃的です。

ただ、作品としての出来は文句なく、もし予定通り発表されていれば、黄金期の殿下のブラック・ミュージシャンとしての側面を代表する一作となったことは疑いようのない内容です。
では、なぜ"The Black Album"は封印されてしまったのか?

殿下本人は先述の「攻撃性」を自身の作品として発表するのに躊躇した、というコメントを残しているそうですが、それは要するに殿下自身が描く「プリンス像」に合致しない、殿下としては発表できる許容ラインを超えていない作品であったということだと思います。
その後、93年にはワーナーとの関係が悪化しすぎたため、最早そんなところに気がまわらないほど怒り心頭だったためか、1週間で作曲からミックス・ダウンまで仕上げた"Chaos and Disorder"を発表していますが、これがあったからこそ94年の"The Black Album"正規発売があったのかも、なんて推測したりしています。(もうどうでもよくなったのかも?)

しかしながらこの時点ではそんな経緯がありつつも、殿下は自身のうちから沸き起こる負の感情をぐっとこらえ、「人間 プリンス・ロジャー・ネルソン」でなく「音楽家 プリンス」としての新作を発表することを選び、本作"Lovesexy"を制作したのです。
そして自身の感情を抑えた状態が逆に倒錯的に創作意欲を刺激したのか、本作はそれまでの名作群と比べても遜色のないどころか、彼のディスコグラフィの中でも随一の完成度を誇るポップ・アルバムとして完成していると思います。

まず1曲目'Eye No'の、美しい音響と女声の語りから、殿下のシャウトで一転して弾ける、ポップでファンキーな始まりからして痛快です。
殿下が明らかに"The Black Album"と正反対の作品をつくろうとしたことはこの導入だけでも存分に感じられるでしょう。

全体的には"The Black Album"にも通底する、硬質なプロダクションがドラムなどに感じられるものの、ビートはよりゆったりとした質感が強く、メロディやハーモニーを活かす形に丁寧に構築されています。
使用楽器やコーラスも非常に贅沢で、華やかなホーンや女性コーラスなどが多くの楽曲で用いられていますが、見事にその音は整理され、隙間を十分に取りながらビートの効能を最大化するように多層化されています。

また、ジョニ・ミッチェルに多大な影響を受け、SSW的な側面も殿下は持っていますが、それが見事に結実したかのような美しくスピリチュアルなメロディが多くの曲で聴かれるのも本作を名作たらしめている要因の一つです。
先述の'When 2 R in Love'の他に'Glam Slam'の多幸的なコーラス部分や、'I Wish U Heaven'や'Positivity'のもつタイトル通りのソウルフルな優しさは一度聴けばその虜となることは間違いないと思います。

全曲名曲で、初期の殿下に見られた個人制作に起因するプロダクションの弱さ(初期はそれが逆に魅力でもありますが 笑)も克服され、演奏や歌唱も脂が乗り切った時期のものであって、その状態で意図的に「高品質なポップ作品」をつくろうとしたわけでして、そしてそれをやっているのがポップ界随一の完璧主義者である殿下なわけですから、最初から傑作になることは約束されていたわけですね(笑)

ジャケットについて冒頭で「神」と申したものの、殿下が本当に自身の全てをさらけ出そうとしたのはむしろ「音楽(の神)」だったのかもしれませんね。
音楽そのものに奉仕するのでなく、自分の負の感情に奉仕するために音楽を道具として使おうとしたことに対する悔恨の念が執念と化し、本作を名作たらしめたのだと思います。
まさに殿下の最高傑作と断言できるでしょう。


ありがとう、そして、さようなら、殿下。
心からご冥福をお祈り申し上げ、追悼のレビューとさせていただきます。



(殿下はネットにおける楽曲の無断転載に厳しく、youtubeなどにあげられた動画を即削除申請して対応しておりました。
亡くなって以降多くの追悼の楽曲がアップされていますが、おそらく遺族等によりすぐに削除されるであろうと考えられますし、また、本人の意向を尊重する意味でも今回は楽曲の貼付けはなしとさせていただきます。
ご了承いただき、ぜひ作品を購入いただければと思いますのでよろしくお願いいたします。)

Mmoths "Luneworks"

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Artist: Mmoths
Album: "Luneworks"
Label: Because Music
Year: 2016

Tracklist
01. You (3:42)
02. Deu (3:47)
03. Phase in (0:22)
04. Para Polaris (4:49)
05. Verbena (2:46)
06. Scent (0:42)
07. Eva (5:16)
08. Lucid (2:34)
09. Body Studies (5:00)
10. 1709 (2:27)
11. Phase out (0:18)
12. Ohm (2:17)
13. Naoko Pt.1 (4:11)
14. Naoko Pt.2 (5:02)


アイルランド出身のエレクトロニック・プロデューサー ジャック・コレランによるソロ・プロジェクトMmothsの1stフルが仏/UKのBecause Musicよりリリースされました。
2012年、2013年にそれぞれ発表したEPが話題を呼んでいたにも関わらず今作で漸くアルバムデビューとのことですが、どうやら本人曰くデビューに至るまでにはかなり苦労があった模様です。

どのような苦労があったかというと、どうも本作の制作開始と同時にひどいスランプに陥ってしまい、楽曲のアイディアが全く浮かばない無為な日々が続いたらしいのです。
本作の制作開始時期ははっきりしませんが、2013年のEPが3月発表で、本作に収録された楽曲が書き上げられたのが2014年の8~9月のことらしいので、おおよそ1年はアルバムのアイディアを考えあぐねていたようですね。

困り果てたコレランは、古巣のアイルランドをラップトップ一つと数枚の着替えを持って飛び出し、LAの友人宅に転がり込んで環境を変えることでスランプを脱しようと試みました。

アルバムの制作を始めた時点では、色々な楽器をふんだんに使い、プロデュースにも凝りに凝ったものを作りたいと考えていたようですが、あえてラップトップだけで、また、慣れない土地で知り合いも少ない状況で制作することで、本作はコレランの人となりがそのまま音となったようなパーソナルな作品に仕上がったように思います。

さて、元々はチルウェイヴ~ウィッチハウス近辺で評価されていたらしいコレランですが、本作の制作にあたってはMy Bloody Valentineを聴き込み、同郷のケヴィン・シールズの才能に刺激された旨を語っています。
確かに、シューゲイザー的な電子ノイズの奔流はそこかしこで聴くことができるのですが、本作が単なる「MBVフォロワーの電子音楽作品」に堕しているかというと、そんなことは全くありません。
むしろ、MBVの手法からさらに一歩踏み込んだというか、むしろ別の場所に到達できているのではないか、と思えるのです。

まず、今までと大きく変わったのはコレランが自分でヴォーカルをとっていること、そしてその声を原型を留めないほどにイコライズして楽曲の中に埋め込んでいることです。
これは、MBV/ケヴィン・シールズがフィードバックノイズの本流の中にビリンダや自分の声を埋没させたことにも通じますが、まだ言葉の聴き取れたそれとは違い、コレランの場合声はその言葉が判別できぬほどに変化して、完全に「音」としての役割しか果たしていません。

そして、その声はMBV的な分厚いノイズではなく、薄氷のような感触の電子音や、ゆったりとしたダウンテンポなビートなどと掛け合わされ、幾重にも多層化されながら、シンプルでエモーショナルなハーモニー/進行を聴かせます。
その傾向は、まるでティム・ヘッカーのような音響的イントロダクション'You'に続く、先行カット曲でもある'Deu'で即座に理解され、そして他の曲に比べて歌声のはっきり聴き取れる'Eva'にて最高潮を迎えます。

シンプルに反復するビートには繊細な残響処理が施されていますが、その処理の仕方からはジェイムス・ブレイクも思い起こさせるような、ダビーな感覚を覚えます。
大々的に導入された彼自身の声と合わせて考えると、MBVを影響の根源としながらも本作はブレイク以降のUKのR&B/ソウルの文脈に位置づけられても不思議ではない作品なのです。
そしてそこには、先ほど軽く触れたティム・ヘッカー的な音の重ね方も見受けられます。
私としては、本作の在り方は「R&B/ソウル化したティム・ヘッカー」というのが最も適当だと思っているのですが、どうでしょうか?

スランプに端を発し、環境を変えてあえてリスタートを切ることで、本作はコレランの実力が嘘偽りなく投影された作品になったように思います。
もちろん、今回挙げた先行者達にはまだまだ及ばないとは思うのですが、アルバムデビューとしては今後を十分に期待させてくれるような力作に仕上がったと言えるでしょう。
個人的には3rdあたりで大化けする気がします(笑)


D'Angelo & The Vanguard "Black Messiah"

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Artist: D'Angelo & The Vanguard
Album: "Black Messiah"
Label: RCA Records
Year: 2014

Tracklist
01. Ain't that Easy (4:49)
02. 1000 Deaths (5:49)
03. The Charade (3:20)
04. Sugah Daddy (5:02)
05. Really Love (5:44)
06. Back to the Future (Part I) (5:22)
07. Till it's Done (Tutu) (3:52)
08. Prayer (4:33)
09. Betray My Heart (5:55)
10. The Door (3:08)
11. Back to the Future (Part II) (2:25)
12. Another Life (5:59)


来る12月15日、世界のブラック・ミュージック・ファンが待ち焦がれたXデーが、あまりに突然に、あまりに不敵に、そしてありあまる衝撃をもって訪れました。
2000年の"Voodoo"以来、実に14年もの間沈黙を保ってきたブラック・グルーヴの伝道師ディアンジェロが、ついに新作を発表したのです。

この14年の紆余曲折については、今まで様々な場所で/形で語られてきたところでもありますので、あえてここでは説明しませんが、"Voodoo"ツアーによる疲弊や、収録曲'Untitled'のMV(全裸のDによるあまりにセクシーな歌唱)から生まれる誤解などから、一度は音楽業界から離れていた彼がこうしてカムバックしたことは、素直に祝福すべきことであると思います。

まずもって、"Voodoo"はグルーヴ・オリエンテッドな作品でした。
あのアルバムでは、楽曲の根っこにあるビートに対し、ドラムやベースなどのリズム隊、あるいはその他の装飾を担うギターやブラスなどが、ビートが瓦解する直前ぎりぎりまで後ノリでアプローチすることにより、非常に重心の低い、ヘヴィなグルーヴが実現されていました。

ドラムを担当したThe Rootsのクエストラヴなどは、そのアプローチ/考え方に対する衝撃を度々口にしておりました。正確なビートをたたき出すことを絶対正義とし、それにより評価されていた彼だけでなく、"Voodoo"におけるディアンジェロのアプローチは、多くのミュージシャン/リスナーのビート感覚というものをネクストレヴェル/ネクストステップに引き上げたのです。
そしてそれは、06年に亡くなったHIPHOP DJジェイ・ディー/ディラがビートを作り出す際に、機械のクォンタイズ機能を無視してまで作り上げたものと共鳴していました。現在のジェイ・ディーの高評価の一端には、ディアンジェロが"Voodoo"にてその独特のグルーヴを再現可能なメソッドとして提示したことも影響していると思います。
(前後関係が逆の可能性は勿論ありますが、Dは95年の1st"Brown Sugar"の時点でもそういったアプローチを見せていたそうですし、単に影響を与えた/受けたというよりはやはり共鳴していたと考えるのが正しいように思います)

さて、それ以降の14年という長い年月は、彼の「新たなアルバム」を予想するにはあまりに長すぎる時間でした。
実際、クエストラヴの「ディアンジェロの次作はブラック版"SMiLE"(BB5によるロック最大の未発表アルバム)」という発言や、種々の「予習アルバム」(ファンカデリックなど)、あるいは数曲のリーク(本作の'1000 Deaths'や'Really Love'などはかなり早い段階でデモverがリークされていました)もあり、リスナーの期待はどんどん高まりましたし、"Voodoo"そのものがあまりに完成度の高い作品でもありましたので、リスナーたちはディアンジェロが生み出すであろう「"Voodoo"の『次』」というものを全く予想できない状況に陥っていたように思います。
それは、2012年の復活ツアー以降ライヴの場で続々発表される新曲を聴いても同じことでした。あれらの楽曲が、Dのスタジオ・マジックの中でどのようなアレンジメントを施されるのか、想像すらできなかったでしょう。

そんな中発表された本作は、"Voodoo"の呪術的なグルーヴをしっかりと踏まえながらも、あれをただ「結果」「到達点」としてしまうのではなく、あくまで「手法/方法論」であるとして、その「方法」でもってより良い「音楽」を作り上げたと言えるのではないかと思います。

「音楽」はリズム/ビート/グルーヴだけでできているわけではありません。そこには当然メロディとハーモニーが同時に存在しています。
"Voodoo"は確かにすさまじいアルバムでしたが、それは極限なまでにグルーヴ・オリエンテッドなものでもありました。ジェイ・ディーと共鳴するグルーヴを生み出す手法を定式化したディアンジェロは、まずはその方法論を研ぎ澄ませる形であの作品を作り上げたように思います。料理で言えば「素材そのものの味」をまずは十分に堪能した形です。

では、そこから次に何ができるかというと、それを他の種々の「素材」と組み合わせ、加工することにより、「(ポップ・)ミュージック」の新たな可能性を探ることです。
そしてその「素材」としてまず彼が選んだのがファンカデリックやジミ・ヘンドリックスなどによるサイケデリック・ロックであり、あるいはBB5やThe Beatlesなどのポップネス/アート志向でありました。
本作に収録されている楽曲は、随所で美しいメロディやハーモニーを聴かせてくれます。あるいはギターのディストーションや多重録音コーラスによる混沌としたサイケデリアを容易く実現させています。
あまつさえ彼は、そこにジャズやカントリー、麗しいストリングスや相変わらずの気だるいブラスなどもぶち込んで、驚くほど濃密でアーティスティックな世界観を作り上げているのです!
そしてそれは、グルーヴのヘヴィさとは裏腹に驚くほど身軽/気軽で、さらりとした爽やかさすら感じさせてくれるのだからたまったものではありません。
ライヴで披露された楽曲は、生の躍動感とはまた違った色彩を帯びながら、うねるようなグルーヴと美しいハーモニーを、そして例えようもない感動をリスナーに強く残します。

そして、その多くにはブルースやゴスペルのもつ「祈り」が強く込められています。
彼自信も「全ての根っこはブルースだったんだ」という発言をしていましたし、また、多重録音コーラスはとてもゴスペル的なスピリチュアリズムを湛えています。

まさに、ディアンジェロは本作で「ブラック・ミュージシャン」から押しも押されぬ「アーティスト」へと成長したのです。
デジタル要素を一切排し、ヴィンテージ機材によるアナログ手法で録音されたサウンドは、本作のもつそういった魅力を非常に生々しく、そして最良の形で提示することに成功しています。

本作は明らかに「"Voodoo"以降の音楽」ですが、その「"Voodoo"以降」という言葉は本作があるからこそ言えることです。
それはそのままディアンジェロを超えるのはやはりディアンジェロしかいなかったという、彼の孤高で、並ぶ者のない素晴らしい才能が、今再び証明されたということを示しているのです。


'1000 Deaths'


'Sugah Daddy'


'Really Love'




Black MessiahBlack Messiah
(2014/12/23)
D'Angelo And The Vanguard

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