Lucinda Williams "The Ghosts of Highway 20"

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Artist: Lucinda Williams
Album: "The Ghosts of Highway 20"
Label: Highway 20
Year: 2016

Tracklist
1-01. Dust (6:20)
1-02. House of Earth (5:28)
1-03. I Know All about it (5:46)
1-04. Place in My Heart (5:14)
1-05. Death Came (6:14)
1-06. Doors of Heaven (5:34)
1-07. Louisiana Story (9:06)
2-01. Ghosts of Highway 20 (7:20)
2-02. Bitter Memory (4:07)
2-03. Factory (4:01)
2-04. Can't Close the Door on Love (5:36)
2-05. If My Love Could Kill (5:10)
2-06. If There's a Heaven (3:35)
2-07. Faith & Grace (12:43)


オルタナ・カントリー/フォーク界の実力派SSWルシンダ・ウィリアムスが先日自身のレーベルより発表した新作は、アメリカの片田舎の広大で乾いた(殺)風景を思わせるサウンドと、そこに住まう者達(主にブルーカラー)の悲哀/ブルーズを込めた言葉を2枚組のフォーマットに詰めに詰めた力作となりました。
私は今作で初めて知りましたが、今年で御年63歳にもなるこの女性は1979年のデビュー以降から今まで、フォーク/ブルーズ/カントリー/ロックの混ざり合った楽曲を真摯に歌い続けてきたようです。

アルバムは、1曲目'Dust'の2本の乾いたギターが交錯する導入部から即座にその空気を確立させます。
そこに、続いて入るリズム隊が描き出す絶妙に弛緩したグルーヴと、先述のルシンダの声が加われば、誰もがいわゆる「アメリカ的なもの(アメリカーナ)」を感じずにはおれないでしょう。
そしてその声はひどくしわがれたハスキーなものですが、例えばトム・ウェイツのような演劇めいたところはなく、ひどく淡々としています。
一つのシンプルな進行/メロディーを、それが擦り切れるまで反復しながら、虚ろで、無遠慮で、やさぐれた声で吐き捨てるように言葉を発していくそのスタイルはまさに豪快なアメリカンロックそのものであり、根底にあるカントリー/ブルーズの影響を強く感じさせます。(そういえば、どこかトーキングブルーズ的でもありますね。)
また、狙ってか自然とかは分かりませんが、やや音程に不安定な部分のある歌唱からは彼女の(後ろ向きな)感情が漏れだしており、どこかアシッド・フォークのような雰囲気もあります。

サウンド面で特筆すべき点はギターです。
本作では、ギタリスト(エレキ専任)にビル・フリーゼルグレッグ・ライツの2名を迎えており、一部の楽曲を除いてほぼ全曲で彼らによるツインギターを聴くことができます。
右がフリーゼル、左がライツとはっきりクレジットされていることからも、ルシンダが彼らのギターサウンドとその絡みを今作の重要なファクターだと認識していることは間違いないでしょう。
深いトレモロで揺れるテクスチュアを持たせながら、ザクザクとしたストロークやゆったりとしたサスティンを織り交ぜて、2本のギターは非常にポリフォニックに絡み合っています。
そこにはルシンダのアコースティック・ギターや歌声があわせて絡まることもあり、そういう際にはまるでコール&レスポンスのような息のあった掛け合いを聴くこともできます。

個人的に特に気に入っているのはオープニングの1-01、アシッドフォーキーなテイストの強い1-05/2-01、今作の雰囲気にぴったりハマるブルース・スプリングスティーンの好カヴァー2-03、そしてラストを飾る12分もの大作2-07といったところでしょうか。
全曲むせ返るようなアメリカーナに満ち満ちており、2枚組86分という大作でありながら芯がブレることが全くない重厚な作品に仕上がっていると思いますし、各楽曲のメロディ/歌唱/演奏どれをとっても申し分なく、佳曲/名曲と呼べるような楽曲のオンパレードで非常に濃密です。これは過去作を追っかけてみたいかも。

Wilcoあたりなんかが好きな方はきっと気にいると思いますので是非。


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山本精一 "なぞなぞ"

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Artist: 山本精一
Album: "なぞなぞ"
Label: UMMO Records
Year: 2003

Tracklist
01. もの投げるなや (4:42)
02. 何かある (4:54)
03. アフタービーツ (0:13)
04. 泥棒の君 (7:17)
05. 沈黙 (4:36)
06. 赤ん坊の眼 (4:23)
07. B1のシャケ (3:38)
08. たくさんの顔 (2:32)
09. あんなに好きだったこと (5:06)
10. たぬき (1:18)
11. たのしいと思えたら (1:59)
12. 人形が好きなんだ (5:32)
13. サジタリアス (0:32)
14. 食堂 (1:03)
15. "SIGH" (0:25)
16. ヤシガニさん (3:27)
17. 弱虫 (2:30)
18. 名前なんかつけたくないうた (5:44)


日本で、山本精一ほど魔力のこもった歌を聴かせるミュージシャンはいないように思います。
日本が世界に誇るアヴァン(スカム?)・ロックバンドBoredomsのメンバーとしてその名を認知されて以来、人力トランス(ROVO)やアヴァンギャルド・ロック(想い出波止場)、ミニマル・ミュージック(PARA)、フリージャズ(ナンバジャズ)、フリー・インプロヴィゼーション(大友良英とのギターデュオ)など、様々な音楽にチャレンジしてきた彼の中には、ずっと「うた」があり続けたように思います。

その最良の成果はサイケデリックな色彩をまとったフォーク・ロック・バンド 羅針盤であることは疑いようもありませんが、それは同時に彼の「うた」が持つ深遠な世界観を分かりやすく翻訳したうえでのものであったこともまた、間違いないことです。
彼は自身の「うた」と詩世界とに潜む無常感や諦念を、サイケデリック/ドリーミーなアレンジメントや、心を突き刺すようなギターソロへと変換し、羅針盤のサウンド・スタイルを創りあげました。
つまり、彼が歌を歌うときというのは、その歌を支える演奏にも彼の世界観がにじみ出ていると言えます。

そして、「アブストラクトソング集」と題されたこの"なぞなぞ"もまた、違った方向から彼自身の世界の翻訳を試みた作品です。
羅針盤が分かりやすくその世界を翻訳し、まとめあげたものであるとするならば、こちらは最低限の言葉のみで構築されたものであり、そうであるがゆえに前者よりもなお彼の心の奥底にぐっと踏み入ったものであると言えます。

今作にて彼は、アコースティック・ギター一本での弾き語りを主なスタイルとして、いつものように言葉を紡いでいきますが、それはシンプルで素朴ともとれるその演奏の隙間から我々の去来し、聴き手の心をかきむしります。
彼の歌は朴訥と、淡々としているのですが、時折死角から襲いかかるかのように衝撃的な言葉をぶつけてくるのです。

ギターも、深く沈み込むようなコード・ストロークや、歌メロとのユニゾン、ブルージーなスライドなど様々な形式を以ってその詩世界をサポートしており、強く一体感を感じさせます。
そういった自由なギターワークと、突如挿入されるサインウェーヴなどのギミックにより、アルバム全体が彼の言葉と同じく抽象的に構築されており、先述の通り彼の世界の秀逸な翻訳として成り立っています。

個人的に好きなのは1曲目『もの投げるなや』や4曲目『泥棒の君』、7曲目『B1のシャケ』、12曲目『人形が好きなんだ』、17曲目『弱虫』あたりでしょうか。
もちろん、最後に突如歌われる『名前なんてつけたくないうた』はぎょっとするような詩世界と、あまりに優しすぎるメロディとが一体となった山本精一史上でも稀にみる名曲です。

彼の音楽世界を追う人であれば、避けては通れない奇盤/鬼盤ですので、ぜひ。
(数年前に再プレスかかって以来手に入りやすいようですし、今のうちに…)






なぞなぞなぞなぞ
(2003/11/28)
山本精一

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Judee Sill "Judee Sill"

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Artist: Judee Sill
Album: "Judee Sill"
Label: Asylum Records
Year: 1971

Tracklist
01. Crayon Angels (2:35)
02. The Phantom Cowboy (1:40)
03. The Archetypal Man (3:35)
04. The Lamb Ran Away with the Crown (3:10)
05. Lady-O (3:10)
06. Jesus Was a Cross Maker (3:20)
07. Ridge Rider (4:28)
08. My Man on Love (3:23)
09. Lopin' Along Thru the Cosmos (3:00)
10. Enchanted Sky Machines (2:40)
11. Abracadabra (1:54)


『泥の中から蓮の花が育つ』
1970年代にたった2作を残し、夭逝したSSWジュディ・シルその人の言葉を借りて言えば、彼女の音楽こそまさに「泥の中から育った蓮の花」に間違いありません。
15歳で家出、17歳で最初の結婚(マフィアと!)、そして数多くの犯罪に手を染めるとともに非常に強いヘロイン中毒への苦しみ…我々平々凡々な人生を送るものからしてみれば信じられないほどに、彼女の人生は波乱に富んでいます。

最初の離婚後、強盗を働き御用となり入った少年院で、彼女はキリスト教的な宗教音楽と初めて触れることとなります。釈放後、L.A.の大学で楽器演奏などの基本的な技能を習得したようですが、そのすぐ後、先述の通り彼女は重度のヘロイン中毒に苦しみ、ヘロインを手に入れるために行った小切手偽造により再逮捕されてしまいます。
ヘロイン中毒を克服した彼女は、一転して音楽の世界にのめり込み始めたのです。

そういった紆余曲折を経て到達した、セルフタイトルの1stアルバムは、デビューしたてのフォーク系SSWとは思えないほどに美しく、重厚な作品に仕上がっています。
根幹となるのはもちろん彼女のギターと歌声ですが、そこに施されたアレンジメント/オーケストレーションは非常に秀逸です。
彼女自身も語るようにバッハに大きく影響を受けたであろうそのサウンドは非常に対位法的かつポリフォニックに絡まることで彼女の音楽に複雑なニュアンスと色彩を与え、また時には一つとなって上昇していくことで彼女の歌/メロディーを神性を帯びた崇高なものへと昇華してしまいます。

当時、いわゆる「バロック・ポップ」というものがソフト・ロック辺りの関連で出てきてはいました(以前紹介したThe New Waveなんかがこのジャンルですね)が、この音楽がバロック音楽のもつ典雅さ/幻想性という、ある意味では表面的な部分を綺麗に拝借したものであったのと対照的に、彼女は自身の罪深い半生に対する深い悔恨の念と、救いを求める純粋な心という、矛盾しながらも複雑に絡み合う心の動きを、バロック的なアレンジメントをもってその音楽に込めることに(ほぼ無意識的に)成功したのです。

そもそも、彼女の音楽は非常にパーソナルなセラピーのような側面が強かったのではないかと思います。
結局のところ、再びヘロインに蝕まれこの世を去った彼女ですが、少なくとも、この神々しい音楽を作り上げた(あるいは作り上げる過程の)時期についてはとても幸せだったのではないかと思います。
そしてその音楽は、未だジム・オルークを始めとする、熱烈な信奉者を生み出し続けているのです。






ジュディ・シルジュディ・シル
(2013/04/10)
ジュディ・シル

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Karine Polwart "Faultlines"

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Artist: Karine Polwart
Album: "Faultlines"
Label: Neon Productions
Year: 2004

Tracklist
01. Only One Way (2:52)
02. Faultlines (3:15)
03. Four Strong Walls (3:46)
04. The Sun's Comin' over the Hill (4:56)
05. Resolution Road (3:37)
06. Waterlily (4:34)
07. What are You Waiting for? (2:47)
08. Skater of the Surface (3:27)
09. Harder to Walk these Days than Run (3:47)
10. The Light on the Shore (4:23)
11. Azalea Flower (5:17)


スコットランドのSSWカリン・ポルワートのソロ1st。
かねてから紹介しているケイト・ラズビージョン・マカスカーらとも通じるような、トラッド・フォークを基調としたコンテンポラリー作品と言えると思います。

根幹にあるのはもちろん彼女の歌とギターです。
トラッドに影響を受けた、旅情溢れるメロディーラインはそれ単体で非常に壮大なサウンドスケープを描きますが、彼女の場合それをバンドがしっかりと支えている印象ですね。

グルーヴィーなダブル・ベースが導くうねるリフを根幹にしたフォーク・ロック曲'Only One Way'から、トラッド系とは思えないような、叩きつけるような激しさが感じられます。
もちろん、楽曲によってはシンプルな弾き語りやそれに近しいものもあり、それだけというわけではないのですが、この手の音楽に想像されるものからかけ離れた音であったもので、初めて聴いたときは面食らいました。

彼女のヴォーカルも、過去のトラッド・シンガー達の抑えた歌唱とは違います。
どこか淡々としていた先駆者たちと違い、彼女は声を張り上げたりすることこそ殆どないものの、個人の感情とトラッドとして歌われる物語の語り部としてのあり方(全作自作曲ですけど…)との間をふらふらと行き来し、楽曲に適したシンギングを自在に使い分けています。

SSWとトラッド・シンガーという存在は、それぞれ「個人の感情の翻訳者」と「伝統的な感情の語り部」という、本来的には相反する性格を持ち得ていると思いますが、それらのペルソナの両方を彼女は自然に持ち得ているのではないでしょうか。

楽曲の方も、シンプルな弾き語りによるモノトーンなトラッド・フィーリングと、ブラスやバンジョー、電子ハープやフィドルなど様々な楽器を以って彩られた豊かなバンド・サウンドとが入り混じりながら、それがちぐはぐではなく、とても自然なポップ・アルバムとして構築されています。
あまり日本では知られていないようですが、かなりの力作です。トラッドファンだけでなく、ロックファンやジャズファンなんかにも間口が広がった良い作品かと。






FaultlinesFaultlines
(2005/03/22)
Karine Polwart

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Tim Buckley "Starsailor"

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Artist: Tim Buckley
Album: "Starsailor"
Label: Straight Records
Year: 1970

Tracklist
01. Come Here Woman (4:09)
02. I Woke Up (4:02)
03. Monterey (4:30)
04. Moulin Rouge (1:57)
05. Song to the Siren (3:20)
06. Jungle Fire (4:42)
07. Starsailor (4:36)
08. The Healing Festival (3:16)
09. Down by the Borderline (5:22)


コードによる束縛から逃れるため、音楽演奏の根源的なスタイルへと回帰しようとしたフリー・ジャズ
今までの音楽の発展を根源から否定するようにすら見受けられた、そのラディカルなスタイルは、同胞のジャズ・ミュージシャンだけでなく、他ジャンルの多くのミュージシャンを魅了しました。
例えば、有名なKing Crimsonの、これまた有名な楽曲'21st Century Schizoid Man'のアウトロには明らかに影響が感ぜられますし、Soft Machineもまた"Third"においてフリー・ジャズと現代音楽を飲み込み、混沌とした音像のアヴァン・ロックを成立させました。

そして、初期はプロテストなフォーク・シンガーとして知られたティム・バックリィもまた、そのキャリアの中期にはこういった先鋭的な音楽へとアプローチし、見事な作品を多く残しました。
彼のジャズへのチャレンジ自体は、以前紹介した"Goodbye and Hello"の次作"Happy Sad"の時点ですでに始まっていました。
続く4thアルバム"Blue Afternoon"でもその路線を推し進めますが、5thアルバム"Lorca"において彼は突然その実験精神を爆発させます。

まるで全盛期のマイルスともリンクするような、呪術的なジャズ・フォークを創りだした彼は、音楽だけでなくそのヴォーカル・スタイルも大きく変容させました。
初期のペシミスティックなハイトーン・ヴォイスをかなぐり捨て、地を這うような重低音ヴォイスを使い、それをいつ終わるとも知れないヴィブラートで引き伸ばし、楽曲の呪術性と深く感応することで、彼は大いなる存在と交信しようとするシャーマンのように振舞ったのです。

今作では更にそのヴォーカル・スタイルを変化させます。
ジョン・コルトレーンのサックス演奏に合わせ練習したというそのヴォーカルは、もはや人間の声とは思えません。深い闇そのもののような低音と、怪鳥がいななくような高音とを瞬時に行き来するそのスタイルは彼の今までの歌声の中でも最もアヴァンギャルドなものと言えるでしょう。

楽曲もフリーキーな即興演奏を中心としたものであったり、うねるギターリフが反復する後ろでリズム隊が好き勝手に暴れるものや、電子音響と彼の声によるソロで、もはや宇宙との交信そのものとしか言えないようなものなど、思いつく限りの実験性をぶち込んでごった煮したかのように混沌としています。もちろん、4,5曲目のような滋味あふれる歌を中心に据えたポップ/フォーク・ナンバーもあったりしてそこがまた一筋縄ではいかないところかと思います(笑)

しかしやはり、そのアヴァンギャルドなスタイルには、聴き手の心を揺さぶる何かがあるように感じます。
引きつる楽器の音の中に、深い低音ヴォイスを落としこみ、あるいは電子音響に高音ヴォイスを乗せて飛び回るその姿には前作でも見られたシャーマニズムと、言いようもないメランコリィ(追い詰められた人間特有のものに思えてしまいます)が存在するのです。
鋭く研ぎ澄まされ、冷たい光を放つ楽曲の裏に、彼の悲しみが充満しているかのような、素晴らしい作品だと思います。






StarsailorStarsailor
(1991/11/05)
Tim Buckley

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