Interview (conversation?) with Anthony J. Hart (a.k.a. Imaginary Forces/Basic Rhythm)

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先日のBasic Rhythmの1stのレビューの更新後に、twitter上にてアンソニー・J・ハートさんご本人(@BasicRhythmUK)から色々と興味深い発言をいただきましたので、ご本人のご承諾を得た上で転載させていただきます。

なお、翻訳に自信がないぶぶんもありますので、原文と日本語訳を両方載せようと思います。
(英語できないのがバレる…)



まず、レビューをUPする前日(前々日だったかな?)くらいに、アンソニーさんが「最近ケイト・ブッシュしか聴いてない」というような旨のことを呟いておりましたので、その点について少しお話をさせていただいていた経緯があることを申し添えておきます。
その時は、彼がケイトの作品の中で特に"The Dreaming"と"Hounds of Love"、そして"The Sensual World"を愛聴しているということと、彼女の音楽に込められた美や個人性(personal)、痛みといったものを好んでいるということをおっしゃっておりました。
(アンソニーさんは基本的にツイート後数日でツイートを削除されており、この前段の話についてはコピーできておりませんので原文が提示できませんが、大体このような内容でした)

その辺りの話を踏まえた上で、以下の会話をお楽しみいただければ、と思います。
なお、[]内の言葉は翻訳時に後から加えた注釈です。翻訳そのものや注釈に間違いがあればご連絡ください。
あと、当日ちょっと酔ってたので何時も以上に言葉が不自由なのはご容赦を…(笑)

Anthony J. Hart(以下AJH): Thank you. Google translate is not the best, but i think what you are say shows an understanding of what I am doing.
([レビューしてくれて]ありがとう。Googleの翻訳はベストのものとは言いがたいけれど、あなたが私のやっていることを理解した上でレビューしてくれていることは感じました。)

mantako(以下MA): Thank you, too. I think it is my selfish opinion, but I trust that it's a result of my sincerely thinking. So I'm so glad!
(こちらこそありがとう。私のレビューは、私自身の自分勝手な意見であるとは思いますが、私自身それが真摯な思考の結果であるということは信じています。だからこそ[そう言ってもらえると]とても嬉しいです!)

AJH: Everyone is free to make their own interpretations. You are right about the use of space and the influence of Detroit. The Main Influences are UK Hardcore, Jungle and D&B, as well as Detroit Techno, Chicago House, Kate Bush, Rap etc.
(自身の見解を持つということについては誰もが自由ですから。[楽曲における]空白の使用と、デトロイト[・テクノ]からの影響に関してはあなたの見解は正しいです。主な影響源ということで言えば、デトロイト・テクノやシカゴ・ハウス、ケイト・ブッシュやラップ[・ミュージック]等々と同様にUKハードコアやジャングル、ドラムンベースもそうです。)

MA: I think it's interesting that you add Kate Bush to your main influences.
(あなたがそこ(主な影響源)にケイト・ブッシュを加えているということはとても興味深いことだと思います。)

AJH: I guess it is about her approach and individuality, and sense of experimentation.
(彼女の[音楽に対する]アプローチの仕方や個性、そして実験精神に関して[影響を受けた]と自分自身では思います。)

MA: I'm interesting that how you reflect her beauty/personality/painfulness in your music.
(あなたが自分の音楽に、どのようにして[貴方自身が以前言っていた]彼女の美/個別性/痛みを反映させているのか、気になるところですね。)

AJH: The Biggest influence in my music, especially Basic Rhythm is obviously my time on pirate radio in London. That encompasses all of this music in Hardcore, Jungle and D&B. I have old Hardcore records that sample Kate Bush. Modern influences would be Grime, Her Records, Rabit, some modern rap etc.
(私の音楽における最大の影響というと、特にBasic Rhythm名義で発表しているものについては、明らかにロンドンの海賊ラジオを聴いていた頃の経験があるでしょうね。そこにはハードコアやジャングル、ドラムンベースといった音楽の全てがありました。[そして]私はオールド[・ファッション]なハードコアのレコードでケイト・ブッシュ[の作品から]のサンプルを含むものも所有しています。最近の影響であればグライムやケイトのレコード、ラビット[USのエレクトロニック・ミュージックのプロデューサー]、いくつかの最近のラップ等でしょうか。)

MA: I don't know about pirate radio in London and there is records sample her.
(ロンドンの海賊ラジオは勿論、そこ[ハードコアのシーン]にケイトのサンプルを含むレコードがあるということも知らなかったです。)

AJH: My mum listened to Kate Bush, & she was always on TV when I was a kid, but this is the first record I bought that her on it...
(私の母がケイトを[よく]聴いていましたし、彼女は私が子供の頃よくテレビに出ていましたから。でも、[馴染みがあったわりに]彼女[の声]が出てくるレコードを買ったのはこれが初めてでしたけどね…)
The Good, 2 Bad & Hugly - Wuthering Heights


MA: It's interesting that you re-discovery her music in such a situation. I can't believe it! Is all of voice in this song from her records? And I feel it have been influenced from reggae/dub.
(そんな状況で彼女の音楽を再発見することになった、というのは面白いですね。[The good, 2 Bad & Huglyを聴いて]信じられない!楽曲中のヴォイス[・サンプル]は全部彼女のレコードからですか?そして、レゲエやダブからの影響も感じますね。)

AJH: The beginning female vocal is her voice. Yes, Jungle & Hardcore did take an influence from reggae as well as Detroit Techno and pop music, Chicago House, Hip Hop & Rap, all sorts. We used sample anything in Hardcore and Jungle.
(最初のヴォーカルは彼女の声ですね。その通りです。ジャングルとハードコアはレゲエからも実に大きな影響を受けています。それはデトロイト・テクノやポップ・ミュージック、シカゴ・ハウス、ヒップホップとラップ・ミュージックなどあらゆる種類のものと同様です。我々はいかなるものでもハードコアやジャングルの楽曲の中でサンプルしてきました。)

(かなり面白い話だ!と興奮しっぱなしだったもので、ここで今回の会話についてblogで紹介したいと申し出て、許可をいただきました。)

MA: Does your tweet "The beginning female vocal is her voice." mean the use of voice sample of the club music in UK?
(あなたの「最初のヴォーカルは彼女の声」というのはUKのクラブミュージックにおける最初の女性ヴォーカルのサンプルという意味でしょうか?)

AJH: They sampled her voice at the beginning of that track. It is sampled from her song Wuthering Heights.
(彼ら[The Good, 2 Bad & Hugly]が楽曲の冒頭でケイトの声をサンプルしている、ってことですよ。彼女の同名曲「嵐が丘」からのサンプルですね。)
Kate Bush - Wuthering Heights


MA: OK, the word "beginning" means "the beginning of the song". I understand. Did they sample her voices in other songs?
(分かりました。「最初」というのは「楽曲の最初」ってことですね。彼らは他の曲でも彼女の歌声をサンプルしてたりしますか?)

AJH: This group didn't, but I'm sure there are other records in my collection that do. I just can't remember right now. So many records.
(このグループ[の楽曲]ではないですね。でも私のコレクションの中に[彼女の声をサンプルした]ものがあるのは間違いないです。今すぐには思い出せませんが、かなり多くのレコードで[彼女の声がサンプルされていま]すよ。)

MA: I see. I want to listen to the songs and tell me that if you remember those!
(分かりました。もっと色々聴いてみたいので、また思い出したら教えて下さい!)



以上です。いかがでしたでしょうか?
海賊ラジオの下りや、前段から引き続いてのケイト・ブッシュの下りなど、UK(ひいてはロンドン)のクラブミュージックの現場に関する興味深い発言が目白押しだったのではないかと思います。
こういった経験が彼の作品(特にBasic Rhythm名義のもの)には反映されているということで、彼の音楽から感じられる「過去の音楽への思い」みたいなものの源泉の一部が分かったような気がして嬉しいです。

とりあえず、先日Imaginary Forces名義での作品"Low Key Movements"もEntr'acteに発注してしまったので(こないだから購入する音源は新譜に限定してたのですが、これだけ特例 笑)届くのを楽しみに待ちたいと思います。
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Interview with @mcatm(drawing4-5) Part 2

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Photo by iwauko murakami


先日掲載しました前編に引き続き、今回は濱田智さん(@mcatm)へのインタビューの後編を公開します。
drawing4-5が今の音楽性と至った切欠や、新作"chimera, not dead"の製作にあたっての試行錯誤、そして、「録音物を作る」ということに対する思いなど、前編よりも濃い内容でお聞きしていますので、お楽しみください!



@mantako(以下MA):そういえば、drawing4-5の音楽性について、CINRA.NETでは「1999年に筑波大学で4人組のギターノイズバンドとして結成された」と紹介されていましたが、明確に現在の音楽性(Edited Folk/HDD Psyche)を目途に活動するようになったのはいつ頃でしょうか。また、こういった音楽を追求していくようになった大きな切欠があれば教えて下さい。


@mcatm(以下MC):元々はソニック・ユースみたいなバンドがやりたかったんですよね。そこにJOA ”Live in~”や、Gastr Del Sol、所謂「シカゴ音響系」の影響が色濃くなってきて…。
しかしながら、ありがちな「演奏力を高めて、表現を豊かにしていく」というノリにはそもそも興味がなかったんです。個人的には、ジム・オルークの「アンチミュージシャン発言」を紐解くまでもなく、「音響系=技巧派」という流れにも懐疑的でしたし、何よりローファイ上がりなもので…。
更にいうと、僕はどちらかというと「リスナー気質」であり、また超雑食なので、自然と色んな音楽の影響に
身体を引き裂かれるような形になったわけです、drawing4-5は。そういうバンドって数多くあるんだろうけど、僕らほど正直に引き裂かれたバンドはなかなかないと思いますよ。


MA:ちなみに、やはりdrawing4-5の音楽において、コラージュってかなり重要な要素だと思いますが、@mcatmさんはこの手法について、どのようなイメージをお持ちですか?コラージュで表現できるものやその意味、利点など何かあれば。


MC:これも、歌詞の時に挙げたのと同様で、「文脈の衝突」を狙っているということです。加えて言うと「自分の(もしくは人間の)想像力は、自分の想像力を超えない」と思っているので、いつもそれ以上のものを体験するための手段について考えています。その一つがコラージュってことですね。
複数人で演奏するのもそのためですし、そういう意味では一貫しているかもしれません。僕にとっての「サイケ」とは、またdrawing4-5が「サイケ」であるならば、そういった「想像力を疑う」ところから出発しているのだと思います。


MA:「自分が聴きたい曲を作る」ことが動機のミュージシャンはいますが、@mcatmさんの場合は「自分の聴いたことのないもの」を志向しているんでしょうか。


MC: 僕も「自分が聴きたい曲」を作るのが動機の一つですが、その曲は、自分の想像力の範疇にあってはダメです。そのために、「コラージュ」「即興」「偶然」と言った前衛音楽の手法が採用されています。


MA:個人的には、複数人の参加やコラージュにより、drawing4-5の楽曲上ではすごく多く「意識」がぶつかりあっているように思います。
そういった混沌とした状況下でも、楽曲の芯にはもっと強い意識(@mcatmさんの、でしょうか)があって、「混沌とした状況」がそれを補強している気がします。特に新しい3rdはそれが顕著だったとも。
顕著、ということについて言うと、今作では先ほどまで仰っていた「衝突」から生じる予測不可能な部分にまで、統一した意識を感じるというか、@mcatmさん(あるいはメンバーの方々)の志向しているものがダイレクトに現れているように感じたのです。


MC:複数の意識をぶつけあうのもそうですが、それ以上に「情報の欠如」を意図的にもたらすことで、楽曲の方向性を定めない、という手法を採ったこともあります。ただ、それはバンドの組織を組み立てる方法論としては失敗だったんですけど…
僕の志向がダイレクトに現れているように聴こえるというのは、単に、制作に6年以上かけた成果だと思います。ちなみに、2年前に一旦完成した'或る出来事'をメンバーに聴かせた時、みんなポカーンとしていました。それぐらい、訳がわからない歪な状態だったんです。そこに整合性をもたらすための6年というか…。


MA:以前「コンポジションの占める割合が上がった気がする」みたいなことをお伝えしたかと思いますが、多分その印象はそこに起因するのかな、と。今作の制作にあたり、今までと変わった/変えた部分は実際にはあったのでしょうか?


MC:コンポジションの比重的には実は1stの方が高かったような気もします。2ndはほぼ即興から成り立っているので、その真逆。”chimera, not dead”は、その中間ぐらいですかね。ただ、情報量が凄まじいので、どこを切り取るかで印象が変わるかも。


MA:なるほどです。確かに、2nd二作に比べると1st寄りな印象はありました。ただ、1st以上に起伏ははっきりとしていて、アルバム/楽曲として仰るとおりの整合性は強く感じます。ちなみに、「情報の欠如」ということについてはどのようなアプローチをとられましたか?


MC:「情報の欠如」ですが、一番正しいアプローチだなと思ったのは、楽曲を断片として制作していくという手法です。その時に出来た曲は3rdにも反映されています。他にも色んなやり方をしたんですけど、そうしていくとメンバーがバンドに参加しているという意識が希薄になるという…。
「楽曲を断片として」というのは、ごく短い主旋律がいくつかあって、演奏する時は即興的にそれらを組み合わせて楽曲を組み立てていく、というやり方です。その共有の深度もまちまちで、その曲を何度も演奏したメンバーもいれば、全く知らないメンバーもいる…というやり方です。


MA:その都度使うフレーズ(主旋律)が変わり、違う楽曲になるってことですかね?ある日はABABCでやったけど、またある日はACDBEみたいな感じで演奏した、みたいな。なんだか、まさにキメラを作るかのような作成方法ですね…


MC:そうですね、即興と作曲の中間ぐらいの。でも、あまり上手く行かなかったですね、当たり前ですがメンバー皆人格があるので…。今でも同様の手法を援用はしていますけど、「楽曲の途中で曲調が変わる」みたいな平凡なところに落ち着いてしまいますね。ライブはまだ模索中です。


MA:ライブはとても興味深いです。そういえば、youtubeなどにいくつか挙げてらっしゃいますが、drawing4-5のライブを音源化する可能性はあったりするのでしょうか?


MC:ないです。というか、無料で気まぐれに出したりはしますけど、きちんとパッケージングするのであれば、2ndみたいな形を取ると思います。僕自身、あまり、お金を出してまで聴きたいと思えるライブ音源ってあんまりないんですよね。ジャズとか瞬間作曲ものはまた別ですけど。


MA:素材として楽曲の一部になることはあれ、そのままで出すことはない、という感じでしょうか。 drawing4-5のようなバンドだと、ライブなりのアドバンテージが強烈にあるわけではないでしょうし、確かにそれをそのままパッケージングする利点はそこまでなさそうですね。


MC:強烈に一回性はあるので、貴重っちゃあ貴重なんですけどね。あと、次は「バンドの」アルバムを作ろうと思っていて、それはどちらかというとライブに近い手触りになるのではないかと。
しかしながら、今後のライブのやり方がこのやりとりでちょっと見えてきました。バンド内でも議論になっていたんですが、我々の録音物のような音楽性を求めているリスナーに、ライブで何を提供すればいいのか、ちょっとわかってきた気がします。


MA:そもそもdrawing4-5でなくとも、ライブ本来の一回性と「ライブアルバム」と化した場合の反復性って水と油なところありますからね…(汗)このやりとりから何か発見があったのなら、一ファンとしてとても嬉しいです!
次に、"chimera, not dead"で、@mcatmさんご本人の中で印象の強い曲を教えていただけませんか?…あとバンド名の正確な読みを…(どろーいんぐふぉーとぅーふぁいぶで合ってますか?)


MC:印象深い曲…。本当は'或る出来事'が一番思い入れ深いかもしれないです。



'棄てられた物語'のように即興で出来上がった曲で、出来た時は「これを作るために音楽をやっていたんだ!」と思っていたのに、いざ録音始めたら全然上手く行かなくて、先述した通りメンバーにも呆れられる始末…。
何度もリトライして、ようやく今の形まで辿り着いたので、思い入れが半端ない…。4時間は語れるやつですね。ちなみに、オリジナルのギターパートを即興で弾いたのはSCLL(Spangle call Lilli line)のライブメンバーで、そのバージョンも遠くない将来発表するかもしれません…。
だから、'或る出来事'がどう受け入れられるかで、今回のアルバムの出来は決まってくるなと思って、実はものすごくナーバスになっていました。しかし、今のところ、評判が良くて良かったです…。
あと、バンド名は、どろーいんぐふぉーふぁいぶ、と読んでいます。


MA:'或る出来事'、本当に名曲でした!'いばら''好事家'も改めて名曲と認識しましたが、'誕生'のゆったりとした導入から一気にリスナーの心に入り込む2曲目にコレを持ってきたあたり、よっぽどの自信作なのだと思いましたし、またその通りだったと思います。
余談ですが、私の妻もこの楽曲については「とても胸が締め付けられる」と感想をこぼしており、聴き手の感情を強烈に喚起する素晴らしい楽曲だと思っています。
SCLLのサポートメンバーが、というのもとても驚きました!まさかこんなところでSCLLとつながるとは…!なんとなく、現在進行形で応援しているバンドの中にかすかでもつながりがある、というのはとても嬉しいものですね。楽曲の初期verもとても興味あります!
(ついでに言うと、2年前の時点のメンバーの方々がポカーンとなったというヴァージョンも気になってます!)
バンド名、「とぅー」は要らなかったのですね…(汗)了解しました!


MC:'或る出来事'評、大変うれしかったです。自分だけが自信満々なんじゃないかって、正直、不安だった…。最初にあのメロが即興で出てきた時の俺は、自慢じゃないけど神がかってましたよ。
2年前のヴァージョンについては無理です!


MA:メロディも素晴らしいですし、そもそもカウンターラインのヴァイオリンも素晴らしかったです!妻について言えば、2ndまでは私が聴いているのを一緒に聴いているだけだったのが、最近会社から帰宅したら"chimera, not dead"を(勝手に)聴いてて驚きました(笑)普段こういった音楽を聴かない彼女もかなり気に入っているみたいです!
2年前のやつは流石に無理ですか(笑)了解です。これはあくまでただのマニア根性ですので気にしないでください!

最後に、これまでの会話の中で@mcatmさんが「文脈の衝突」から起きる「@mcatmさん自身にとって意外な」ニュアンスや印象を求めているのだと解釈したのですが、それを作品(≒アルバム/EPなど)として発表するためには、どうしても現れ出た音の取捨選択や編集作業という「操作」が必要になってくると思います。
また、drawing4-5のような音楽を作るならば、その作業に膨大な時間がかかることも予想できます。
現れ出た時点では「意外/想像外」であっても、そういった操作/作業をしていく中で色あせてしまうというか、新鮮さを失っていく場合もあるでしょうし、乱暴な言い方をしてしまえば、そういう「操作」を経なくてはならない時点で「意外性/想像外性」が死に体になってしまうこともあるのではないかと思うのです。
ともすれば、そもそもの時点で「@mcatmさんの求めるもの」と、「録音したものを作品としてまとめあげる作業」とは性質的に相容れない部分があるのではないかと思うのですが、こういったことについて@mcatmさんはどのように考え、作品を製作されているのでしょうか?


MC:なので、制作途中に何度も飽きます(笑)!僕にとっての音楽制作って、自分に対する裏切り作業なので、飽きた段階で「次にどうやって裏切ってやるか」が鍵になってくるわけです。そうすると、容易に想像がつくと思うんですが、6年ぐらいはあっという間に過ぎます…(笑)。
『「僕自身の求めるもの」と、「録音したものを作品としてまとめあげる作業」とは性質的に相容れない』というのは、本当にその通りです。その戦いの過程で、自分が分裂していくような感覚に陥りますし、何度も情緒不安定になって家人に心配されたり(笑)します。大人になったので、今回はそんなことなかったのですが、1st発売時は、タワレコのフロアを泣きながら徘徊してたりしましたから…(笑)。神経が太いので大事には至らないのですが、あまりオススメできない制作方法かもしれませんね。


MA:いえいえ、その途方も無い試行錯誤の末に生まれたからこそ、”chimera, not dead”はこんなにも力強く、素晴らしい作品になったのだと思います。まさに「6年の重み」が詰まっているなあと。
私なんかもう年末から1日1回ペースで聴いてて、しかも聴く度に感動しっぱなしでえらいことになってますので(笑)
Drawing4-5の、歪でありながらも力強いというか、分裂症的でありながら一貫したエモーションを感じる不可思議な作風の基にある熱意と苦悩を知ることができ、一ファンとしてとても有意義な時間をいただけたと思います。
本当にありがとうございました。




いかがでしたでしょうか?
私としては、drawing4-5の特異な音楽が実に様々な試行錯誤/苦悩と、非常に微妙で繊細なバランスの上で成り立っていることが、ご本人の言葉を通して伝わってきました。
まだ"chimera, not dead"発表から間もありませんが、本文中でも触れられている次回作の構想(「バンドの」アルバム)についてもお聞き出来ましたので、期待して待ちたいと思います。

また、本インタビューの公開に際し、濱田さんには大幅な加筆修正と追加質問への回答(了承の上本文中に挿入しました)もいただき、前回及び本エントリーの公開について、多大なご尽力をいただきましたことを、感謝の念とともにここに書き記しておきます。
本当に、ありがとうございました!


おまけ インタビューで触れられた楽曲





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(2014/12/24)
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(2010/04/28)
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Interview with @mcatm(drawing4-5) Part 1

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Photo by iwauko murakami


様々な楽音を始めとして、フィールドレコーディングやドローン、アシッドフォーキーな歌声などの雑多な要素を煮詰めに煮詰め楽曲を形作るという特異な音楽性で、群雄割拠の邦インディーズ界(?)で密かに、しかしながら強烈な存在感を放つバンドdrawing4-5

今回、ひょんなことから1999年の結成時からバンドに所属されるとともに、中心人物でもある@mcatmこと濱田智さんに、(ほぼ無断 笑)インタビューをさせていただきました。

2014年は、かねてより定期的に製作状況が漏れ聞こえておりました3rd"chimera, not dead"がついに発表され、そのあまりの名作ぶりに一部で熱狂的な声があったことは記憶に新しいところですが、本インタビューでは製作に6年もの年月を費やしたという本作と、バンドの音楽性の根幹をなす、濱田さんの音楽観について主にお聞きしましたので、前後編に分けて掲載させていただきます。

あくまでインタビューの流れというか開始がほぼ無断だっただけでして、ちゃんと濱田さんご本人には了解を得た上で掲載しておりますことを、改めて申し添えておきます。
なお、@mantakoが私です。



@mantako(以下MA):そういや突然ですが、@mcatmさんのD'Angelo新譜評が知りたいです!


@mcatm(以下MC):LP待ちなのですべてをきちんと聴いたわけじゃないんですけど、’Really Love’聴いて、耳が飛び出るかと思うぐらいビックリしました!誤解を生むかもしれないですけど、drawing4-5でやりたいのはああいうことです。どっちも、HIPHOPを迂回した表現だと思ってます。


MA:なるほどです。drawing4-5における歌詞や、その歌い方にはHIPHOPを通過したような(有り体に言えばラップのような)ものを感じる瞬間がありますが、サウンド面ではどのようなことを意識してらっしゃいますか?


MC: drawing4-5にとってHIPHOPからの影響は非常に大きいんですけど、絶対にラップは導入しないようにしています。何故なら、ラップって表現として強すぎるから。ラップ入れただけで、外から見ると「HIPHOPバンド」になっちゃいますよね。「HIPHOP meets 何とか」っていう、ドン臭い感じ。


MA:やはりラップは印象が強いですものね。入れるとそれだけでHIPHOPになってしまう。他には何かありますか?避けているというよりは、重視していること/狙っていることなどあれば。


MC:サウンドでも歌詞でも、「文脈の衝突」を重視しています。いかに自分にとって意外なことが起こるか、ということなんですが。サウンドとサウンド、言葉と言葉のコンテクスト同士がかけ離れていれば離れているほど、そこに激しいイマジネーションの雲のようなものが生まれますから。


MA:文脈の衝突というのは、異なった要素をぶつけたときに、その隙間に現れる予想外の感覚ということでしょうか?


MC:そうですね。はっきりと、そういう「境界線の曖昧な表現」を追求してるつもりですね。同時にそれは、音楽をやってる上で必ずしも誠実な態度とは言えないのかもしれない、といつも悩むところです。


MA:個人的に、そういう形で生まれてくるイメージみたいなものって陽炎のようというか、強烈ではありながらどこか曖昧模糊としていて、聴き手によってかなり意味合いが変わりそうな気がします。「予想外の」と仰っているのは、そういう、ある程度聴き手に委ねる部分もあるということですか?


MC:「聴き手に委ねます!」ということを第一義に作っているつもりはないんですけど、結果的にそういう表現になっていることは否定もしないですし、個人的には好ましいことだと思います。元々、歌詞の意味を限定しなかったR.E.Mが好きなこともあって、単純にリスナーとしてはそういう表現のほうが好きですね。
だから、僕が一番の参照元としているようなDreamiesとか、あらゆる実験的な音楽を聞く事は、(僕が楽しめるレベルの)ポップミュージックを作る上で、とても重要なことだと思っています。すべてのポップミュージシャンは、実験音楽やアヴァンギャルドな悪ふざけに触れるべき!


MA:同感です。実験的な音が、一部のミュージシャン/好事家だけでなく、広くポップフィールドで応用されると、もっと色々面白いだろうなー、とは漠然と感じています。
Dreamiesの名前が出たのでお聴きするのですが、もしよろしければ@mcatmさんのサイケデリックロック/アシッドフォーク近辺でのベスト5作品(時代は関係なく)を教えていただけませんか?


MC:超難しい…。パッと思いつくので言うと、Bill Holt ”Dreamies”、White Noise ”An Electric Storm”、Os Mutantes “Mutantes”(2nd)、Tower Recordings “Folkscene”、Benoit Pioulard “Hymnal”ですかね。
でも、PG Six “well of memory”とか、satomimagae “Awa”とか、Linda Perhacs “Parallelograms”とか、Islaja “Palaa aurinkoon”とか…外せないのも大量にあって、5枚は無理…。


MA:ごく一部しか分からなかったです。質問しておきながら申し訳ないです…やはりdrawing4-5の楽曲において、そういったバンド/ユニットからの影響ってのはありますか?


MC:無茶苦茶あります!!!!!最初に挙げた五枚は、完全にリファレンスです。「アシッド・フォーク」と言っておきながら、最初の三枚とかは完全にコラージュものですし。Mutantesの2ndのジャケットは理想のバンド像です!
(ここで最初の5バンド/ユニットについて動画付きで楽曲をご紹介いただきました。本編の最後に貼っておりますので、併せて御覧ください。)


MA:うおおたくさん動画つきで!ありがとうございます!Dreamiesは気になりつつ聴いてなかったのですが、折角の機会なので注文してみました!後も徐々に!
もしよければ、この関連で以下の2種についても教えていただけませんでしょうか。

(1)@mcatmさんがリスナーとして選ぶオールタイム・ベストあるいは無人島アルバム
(2)先程の5作以外でdrawing4-5の、現在の音楽を構築する上で強烈にリファレンスとなっているアルバム

枚数制限なしでお聴きしたいと思いますが、掲載の都合上、特にこれについてはピックアップしてほしい、というような盤がありましたら教えていただけると幸いです。


MC:枚数制限無しになると書きだすのに一週間ぐらいかかってしまうので、ある程度制限して考えるんですが、(1)無人島ディスクについては、大人の嗜みとして(笑)常に懐中にリストを忍ばせていたいなと思っています。

【無人島ディスク】
1. Sebadoh “Freed Weed”
2. Pavement “Westing (by Musket and Sextant)”
3. Joan of Arc “Live in chicago, 1999”


後は先に挙げたTower Recordingsとか、Dreamiesも含まれます。

また(2)リファレンスですが、ここに挙げたもの以外で考えると、HIPHOPと実験音楽が圧倒的に多いです!
例えば、Madvillainの"Madvillainy"(これは1st作るときにも参考にしているフェイヴァリットディスクです)とか、今回で言うとaiwaくんというトラックメーカーに教えてもらったAlchemist "Russian Roulette"とか。
また、Prefuse 73 "The Only She Chapters"も、制作の途中に発表されてある種の「超えなければならない壁」として立ちはだかりましたね。Sun RaやNo-Neck Blues Bandの諸作とか、DestijlやTime-Lag、Not Not Funなどの愛すべきレーベルの作品や、インドやアフリカ、アジアのポップミュージックの影響も大きいです。


MA:ありがとうございます。Joan of Arcの"Live in Chicago, 1999"については、以前お話していらっしゃったのをよく覚えています。
個人的にはJOAの活動においてこの作品と次作"The Gap"は明らかにティム・キンセラの創作のピークであったと思いますが、個人的には"The Gap"の方が好みということもありますし、
また、誠に勝手ながら、drawing4-5の音楽から私が受ける印象に近いのは"The Gap"の方なのです。


MC:嬉しいですが、僕にとっては「まだ”Live in Chicago, 1999”には辿りつけなかったのか」という事でもあり(笑)、”chimera, not dead”は確かに”Live in~”とは趣向を異にする作品ですから、まだまだ制作の道は続く…ということなのかもしれません。
ちなみに、ティム・キンセラのピークということでいうと、あの二作はケイシー・ライスの尽力がかなり大きかったんじゃないかなーと思いますし、数年前の来日時に「自分は他の人がいないと何も出来ない」と、僕と同じようなことを言っていた(笑)ので、どんな人が関わったかで大分内容が変わってくるんだろうなと思います。


MA:@mcatmさんは"The Gap"についてどういう作品だと捉えていらっしゃいますか?
勿論、"Live in Chicago, 1999"とdrawing4-5の音楽との関連性など、何かご本人として思うことがあればそちらもお聞きしたいです。


MC:”The Gap”が発売される直前に、Weatherのイベントで佐々木敦さんがDJで’As Black Pants Make Cat Hairs Appear’をプレイしたんですが、本当にぶっ飛んだことはよく覚えています。
僕がガラスの割れる音をよく使うのは、あの曲からの直接的な影響です(笑)。
勿論、大傑作だと思いますし、個人的な思い入れも大きいです。”Live in~”はアルバムトータルで見た時に、あのJLG『ウィークエンド』を模したアートディレクションも含めて、ほとんど「宝物」に近い完成度を誇っているので、どうしてもそちらを無視するわけにはいかないのですが、“The Gap”みたいなアルバムを作れるバンドは、あの当時のJOAしかいなかったでしょう。
ちなみに、JOA伝説の初来日時、酔っ払ったティム・キンセラに、drawing4-5のテープ作品を渡しましたよ。何の音沙汰もなかったけど、多分あいつ、テープ失くしてると思う(笑)。


MA:ガラスの割れる音は1st収録の’たたかい方’の冒頭でもはっきりと使われてましたね。
あれは確かに聴いた瞬間「あ、”The Gap”だ」なんて思いました(笑)
そこも余計に嬉しかったというか、私は本当に”The Gap”が好きで、@mcatmさんとの会話からdrawing4-5とJoan of Arcがつながっていることを確認できた時は心のなかで小躍りしてました(笑)

(後編に続く)




@mcatmさんの選ぶサイケデリック/アシッド・ミュージックの5枚

1. Bill Holt "Dreamies"
'Program Ten'(前半12分)


2. White Noise "An Electric Storm"
'My Game of Loving'


3. Os Mutantes "Mutantes"(2nd)
'2001'


4. Tower Recordings "Folkscene"
'Atrocity Jukebox'


5. Benoit Pioulard “Hymnal”
'Margin'



おまけ


Joan of Arc
"Live in Chicago, 1999"より'Who's Afraid of Elizabeth Taylor?'


"The Gap"より'As Black Pants Make Cat Hairs Apper'



後編についてはまた後日掲載いたします。
なお、本インタビューの掲載に際し、2枚のアーティスト・フォトをご提供いただきました。
1枚は今回の一番上に掲載しているもので、もう1枚は後編で掲載いたします。お楽しみに!
(後編は更に内容が濃いですよ!)


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(2014/12/24)
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