The Necks "Unfold"

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Artist: The Necks
Album: "Unfold"
Label: Ideologic Organ
Year: 2017

Tracklist
01. Rise (15:33)
02. Overhear (16:17)
03. Blue Mountain (20:58)
04. Timepiece (21:47)


オーストラリアの誇る即興トリオThe Necks
結成は1987年ということでなんと今年で結成30周年にもなる大御所ユニットなのですが、私が知ったのは実は最近でして、昨年の初来日に絡んで名前を見ることが多くなった、というのが切欠でした。
(一応、以前ドラマーのトニー・バックがFenneszと共演した盤を聴いたことはありましたが、The Necksの人なんて意識してもいませんでした 汗)

来日公演には行けませんでしたが、editions Mego傘下で、ステファン・オマリーが主宰するIdeologic Organより2017年早々に新作が発表されることを知ったのと、バンド自体になにか惹かれるものを感じたのもあり、ReRより数年前に出ていた過去8作を集めたBOXを年末に購入して(あとは年明けに2013年の"Open"も購入して)新作を迎える準備を着々と進めておりました(笑)
本作は1stプレスが発売前に売り切れ(eMegoのサイト見に行ったらSold Outの文字が…)てしまい、焦ってBoomkatで確保しましたが、なんとか手に入ってよかったです。(3月に再プレスがかかったようです)

さて、本作について述べる前に、まずはThe Necksの基本的なスタイルについて述べることとしましょう。
彼らが根本に有するのは「即興演奏」「ミニマリズム」の2点で、これは彼らの作品のどれを聴いても意識する要素だと思います。
ドラムスとベース、そしてピアノがストイックに反復しながら徐々にそのフレーズを変化させていき、殆どの作品において、1時間もの長い時間を使って演奏が上り詰めていく様がはっきりと聴き取れます。
これまで"Unfold"を含め10作を聴きましたが、個人的にこの方向性で最も好きなのは2003年の"Drive by"でした。
繰り返しますが本当にストイックな反復をベースとして、その上で丁寧に音を変化/レイヤーさせていくことで生じる高揚感には他では得難いものがありますし、その演奏はしなかさと共にどこかはっきりとした輪郭を持っており、クラウトロックなどとも比較できるような硬質な魅力もあったように思います。

しかしながら、彼らはその作風を2000年代後半から徐々に変化させていき、そしてそれは2010年代に入ってだんだんと顕著になっていきます。
それを私が強く意識したのはやはり後で手に入れた"Open"でした。
一聴してまず感じたのは「禅」の様な感覚というか、今までのストイックな反復によるディシプリンがもたらす明確な輪郭線が融解し、もっと抽象的で流動的な「空気」を醸しつつも意識が一処に集中するような、メディテーティヴな感覚でした。
"Open"ではメロディにラーガのようなスケールを聴き取れたため、そこに起因した印象かな、と思っておりましたが、今作ではそれがさらに突き詰められ、頂点を迎えているように思います。

なによりも変化したのは、もはや彼らは明確なフレーズの反復を行っていない、という点だと思います。
ドラムが土台となるパルス/グルーヴを発信し、そこにベースが明確なリフの反復(「リフの反復」って妙な言葉ですが 笑)でもってグルーヴを強化し、ピアノが同じく反復しつつ音響的な装飾を施す…という、反復を主体とする即興演奏におけるある種の暗黙の了解を完全に拒否しているのです。

彼らは互いの演奏、一挙手一投足にまで集中し、他の2人の演奏に最適な答えをリアルタイムで返し続けます。(もちろん、今までの作品同様オーヴァーダブでレイヤーされた部分もあるのでしょうが)
いわゆるインタープレイで楽曲を構築していく様は、(私自身はThe Necksのことをジャズ・バンドとはあまり思っていないのですが)まるでビル・エヴァンス率いるピアノトリオが(シンセやオルガンなども用いつつ)フリーミュージックを演奏したら、というifのようにも聴き取れますし、また、本作のリリース元であるIdeologic Organ絡みでは、レーベルオーナーのオマリーが灰野敬二、オーレンアンバーチと組んだNazoranaiや、あるいはメンバーの共通から灰野/オルーク/アンバーチのトリオの演奏なども(熱量自体は違いますが)思い浮かぶ気がします。

本作は彼らにしては珍しく(?)15~20分程度のコンパクトな曲が並んだ作品となりましたが、時間感覚を希釈し、逆に濃縮するような感覚は今までで最も強いように思います。
今年の新作ではかなり上位に食い込んできそうです。


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Oto Hiax "Oto Hiax"

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Artist: Oto Hiax
Album: "Oto Hiax"
Label: editions Mego
Year: 2017

Tracklist
01. Insh (2:29)
02. Flist (3:47)
03. Dhull (1:46)
04. Eses Mitre (6:33)
05. Creeks (5:15)
06. Bearing & Writhe (1:34)
07. Littics (2:35)
08. Thruft (3:48)
09. Lowlan (4:42)
10. Hak (3:39)
11. Hok (3:37)
12. Loyal Odes (5:47)


Seefeelのマーク・クリフォードとLoops Hauntのスコット・ゴードンによるエクスペリメンタル・プロジェクトOto Hiaxが、2011年の結成以来6年の歳月をかけ、満を持して発表したセルフタイトルの1stは、実に様々な音(正に"Oto"?)が絶妙にレイヤーされ、ミニマルに反復しながらもポップネスを滲ませる快作でありました。

お恥ずかしながら、私はSeefeelもLoop Hauntも聴いたことがないので、彼ら二人がそれらメイン・プロジェクトで聴かせる音は存じ上げていないのですが、今作に収録された楽曲においては、多くの箇所で人懐こいメロディが慎ましやかに鳴り響いているのが聴き取れるでしょう。
それらのメロディは、00年代のエレクトロニカ/電子音楽(特に、個人的に偏愛している12K)にも通じるような牧歌性を帯びていますが、(特にそれらの類の音楽がそこそこのムーヴメントを形成した際に、雨後の筍のように現れた)創意工夫の感じられない凡庸な
ユニットが漫然と羅列し、それに乗っかったリスナーが「美メロ」的に持ち上げたような安易な鳴り方はしていません。

それらメロディは決して楽曲の主要素となることなく、室内楽的で優雅なテクスチュアを持った楽音や、サイケデリック・ロック/クラウト・ロックを想起させるような軽く薄いディストーション・サウンド、ディープで透き通ったドローン、アナログシンセと思しきオールドスクールな質感の電子音、そしてゴトゴト・ゴツゴツとした具体音などと並置され、その中に埋もれ、そして時に浮かび上がります。

それらは入れ代わり立ち代わり浮かび上がっては消え、まるで万華鏡のようにサイケデリックな酩酊感を聴く者に経験させるでしょう。
さらに、随所に即興的な空気を滲ませるような展開を見せつつも、楽曲はミニマルな反復を基本的な骨子として成り立っているものばかりで、そのストイックな所作にはやはりeMegoらしい前衛的な姿勢が見て取れるように思います。

しかしながら、冒頭でも述べましたように、主要素として押し出されることなく、控えめに仕込まれた牧歌的なメロディが本作を単なる実験的な作品だけでは終わらせず、ポップネスとの両立を達成しています。
ここにある音は、最先端の、カッティングエッジなものではないかもしれませんが、非常に豊かなものだと思いますし、00年代の電子音楽の、理想的な模範解答(の一つ)と言っても、間違いはないでしょう。


Andrea Belfi "alveare"

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Artist: Andrea Belfi
Album: "alveare"
Label: IIKKI
Year: 2017

Tracklist
01. Vano (7:38)
02. Statico (3:32)
03. Grigio (9:24)
04. Abito (5:20)
05. Passo (8:34)


近年デヴィッド・グラブスとのコラボレーションなどでも注目されているアンドレア・ベルファイの新作が、アートブックとレコードというコラボレーションによる美術作品を展開するイタリアのレーベルIIKKIの第二弾作品として発表されました。

『蜂の巣』を意味するイタリア語を冠する本作は、第二次世界大戦後のイタリアで、先進的な建築家達によって建造された巨大集合住宅(Nuovo CorvialeやRozzol Melara)をテーマにしたもので、アートブックの方はマティアス・ハイデリック(Matthias Heiderich)という方による、それら建造物の写真集となっているようです。

多くの人が住まうことができるよう、合理性を追求したと思われる巨大集合住宅は、日本で言えば都営住宅・市営住宅のようなものに似ているのではないかと、写真を見る限りでは思われます。
近未来的ではありつつもどこか画一性からくる不安を煽るような建造物の雰囲気は、湿気の多い日本ではなにか淀みが生まれ、ホラー映画の舞台として多用されるものであるのは皆様御存知でしょうが、マティアスや、そしてベルファイらイタリア人にとっては少々趣が違うようです。

このアートブックに対してベルファイは、自身による呪術的なドラム/パーカッションと、シンセサイザーによって生み出されたひやりとした音響でもって形作られた音楽を提供しています。(3及び4曲目にはゲストミュージシャンが参加)
打楽器の有機的な響きと、シンセの無機質な響きとが絶妙に和合しながらリヴァーブをかけられ、まさにマティアスがNuovo CorvialeやRozzol Melaraを表現して言うところの「無限の廊下」にて反響し続けているようにも思える音空間を作り出しています。

シンセサイザーによるドローンが描く音程の推移は、非常に弱々しくもノスタルジックな感情を喚起し、その上を舞うパーカッションや電子音はかつてそこに住まう人たちが見た夢の断片のようでもあります。
そこには、人の生活という「自然」と画一的な住居という「不自然」が同居したがゆえの、一種独特な魅力が存在するようにすら思えます。

ベルファイの音楽だけでも非常に素晴らしいのですが、アートブックの方も買おうかな、なんて迷ったりもしています。
どうしようかな…(笑)


Helm "Rawabet"

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Artist: Helm
Album: "Rawabet"
Label: ALTER
Year: 2017

Tracklist
01. Don't Lick The Jacket (Version) (11:28)
02. Fog Variations I (14:21)
03. Fog Variations II (7:49)
04. Rawabet (7:35)
05. Downtown Rubble (2:24)


ロンドンを拠点として活動するサウンド・アーティスト ルーク・ヤンガーによるソロ・プロジェクトHelmの新作が、自身の主宰するALTERより発表されました。
本作は、彼が2015年にベルリンのレーベルPANのエジプトからオーストリアへ回ったツアーの内、10月22日のエジプト(ラワベット・シアター)で行われたライヴを収録したもので、解説を読む限りはオーバーダブなどはなされていないようです。

彼は同年6月にPANより"Olympic Mess"という作品をリリースしており、本作の収録曲の内前半3曲は、アルバムの楽曲'Don't Lick The Jacket'及び'I Exist In A Fog'に新たな(そして「別の」)素材を加えることでアルバムを再想像(re-imagined)/拡張(expand)したものだということです。

どちらの楽曲も元の倍以上に引き伸ばされながら、よりラフでライヴ感の溢れる楽曲に変質しています。
よりインダストリアルな、虚無的な音響/具体音/ノイズが絡まり、楽曲が再構築されていく様には、どこかFenn O'Bergのライヴ作品のような即興性も感じることができ、奥行きのあるクリアな録音も相まってか非常に多層的な、生々しい印象を生み出しています。
当日のステージ/演奏機材と思しきジャケットもそのリアルさをより強めているように思えます。

そこから、不穏なドローンが加速/減速しながらピッチを変え、その奥から加工された不気味な声と、何かを擦るような音が立ち現れ、ドローンがフェイド・アウトすると同時に、歪んだシンセ音をダブワイズしたような音響や打音が空間にディープなエコーを投げかけるかのようにかぶさってくる'Rawabet'、それが暴力的なビートへ、そしてメランコリックなホワイトノイズと変貌していく'Downtown Rubble'の2曲へとが続いていく様はまさにライヴのエピローグといった風情で、最後の最後までリスナーに退屈を感じさせることはありません。

43分という短い収録時間ながら非常に充実した、まさに解説にある通り「スナップショット」と言って差し支えのない、ラフで生々しいライヴのドキュメントだと思います。
近年の(エクスペリメンタルな)電子音楽における、ライヴ/即興演奏の面白さ・スリルを余すところなくパッケージングした作品です。
今年、最初に聴く新譜に是非オススメします。


Lustmord "Dark Matter"

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Artist: Lustmord
Album: "Dark Matter"
Label: Touch
Year: 2016

Tracklist
01. Subspace (27:33)
02. Astronomicom (20:05)
03. Black Static (23:03)


我々はしばしば言います。
「全ての音楽/ジャンルは出尽くした」と。
それは確かにある意味で真実であるように思えますし、実際00年代以降の音楽において、それまでの音楽ジャンル/要素の継ぎ接ぎでない、真に「新しい」ものがあったかと問われると、否定することは難しいように思えます。

しかし、1980年から活躍するインダストリアル/エクスペリメンタルな電子音楽のパイオニアの一人であるLustmordことブライアン・ウィリアムズは、新作"Dark Matter"によってそれを否定しようとしているのかもしれません。

本作がそのタイトルに関する"Dark Matter"とは、直訳すると「暗黒物質」。
ご存知の方もいるかもしれませんが、銀河系内に遍く存在するとされる、観測不能な質量を説明するために仮定された存在であり、全銀河系の95%を占める(暗黒物質で約27%、暗黒エネルギーで約68%)と言われています。

これらは物質的な相互作用をしないために(現在の科学技術では)観測することが不可能とされますが、我々が観測可能なものの存在(重力など)から間接的にその存在の証拠は得られており、現在はその直接的な証拠(=観測結果)が探されているところ、ということのようです。

…と、突然科学的な話になってしましましたが、そんな"Dark Matter"というタイトルを冠した本作は、ウィリアムズが1993年から2003年の間にNASAなどの様々なソースから蒐集した、宇宙/空間的な活動(cosmological activity)に関する音のライブラリーから構築された、実に「ダーク・アンビエント」な作風の大作です。

20分~30分弱の大曲3曲という構成で、ドゥーミーとも、ダークとも感じられる低音がずんやりと空間を満たしながら変化していく。
そしてその上には、スペーシーな音響や何かが蠢くような不穏な音塊などがゆったりと、しかし入れ替わり立ち替わりレイヤーされ、コズミックなサウンドスケープを作り出しています。

聴いていくうちに宇宙の只中に放り出されたような孤独感や虚無感を感じることになりますが、不思議と怖いと思う気持ちはありません。
まるで自分という矮小な存在を俯瞰して眺めているかのようなメタな感覚を覚えるかのように、思考が弛緩しながらも研ぎ澄まされていくのを感じ、いわゆるメディテーションのような状況/感覚に入っていくことになるでしょう。
時間感覚も凝縮されるのか、全てが終わってみると1時間強という時間があっという間だったように感じますし、さらにサウンドの重さとは裏腹にすっきりとして、爽やかな気持ちすら覚えるのが不思議です(笑)

この世に観測されていない物質/エネルギーがある、というのはすなわち、観測されていない音もある、ということにつながるんじゃないかと思います。
実際、可聴域などの問題もありますし、我々人間が「出尽くした」と思っている音(=音楽)は実はほんの一部のものでしかなく、これからの技術の発展により新たな音が観測できるようになれば、新たな音楽ジャンルも生まれてくるのかもしれません。
ウィリアムズがそのことをずばり示唆しようとしたかというと(冒頭にあんな風に書いておきながら)、そうではないとは思いますが、暗黒物質をテーマとした本作から、「未知という名の希望」を感じ取ってみるのも、悪くないかもしれません。


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