Parliament "Funkentelechy vs. the Placebo Syndrome"

Artist: Parliament
Album: "Funkentelechy vs. the Placebo Syndrome"
Label: Casablanca
Year: 1977
Tracklist
01. Bop Gun (Endangered Species) (8:31)
02. Sir Nose D'Voidffunk (Pay Attention - B3M) (10:04)
03. Wizard of Finance (4:23)
04. Funkentelechy (10:56)
05. Placebo Syndrome (4:20)
06. Flash Light (5:46)
さて、昨日に引き続いてP-FUNKです。
本日は、もう片方のParliamentが77年に発表した6thを。
昨日のファンカの話の中で、パーラの音の特性を、「ファンクビートをベースとし、それをコーラス、ブラスやシンセなどで覆い、スペーシー&オペラティックな質感を持たせた」と表現させてもらいました。
言い換えれば、ファンカが活動が進むにつれ引き算的な方法論でソリッドなサウンドを作り上げたのと裏腹に、パーラの音は足し算的なわけです。
荒唐無稽なスペース・オペラ的コンセプトや、ライヴにおいてそれをなぞるような大掛かりな舞台装置というのは、その「足し算」的な方法論の中での試みの一つだったのかもしれません。
そして、この1977年あたりから、ファンカとパーラの音楽性は徐々に曖昧になっていきます。
その証左とも言えるのは、ライヴ・アルバム"Live: P-Funk Earth Tour"でしょう。パーラ名義のライヴ・アルバムですが、収録されているツアーは名前の通り「Pファンクのツアー」です。
音の方もパーラの妄想コンセプトやラグジュアリーな装飾と、ファンカの引き算的ソリッド・ビートが合体したような力強いもので、彼らPファンクの音楽がどんどん強力になっていく瞬間をとらえたドキュメントとしてとることも出来そうです。
そして、その傑作ライヴ後の初のスタジオ作品こそが、この"Funkentelechy vs. the Placebo Syndrome"なわけです。
思うに、ここからのパーラ/ファンカは「音楽性が曖昧になった」のではなく「2バンドの音楽性の統合を目指し始めた」のではないでしょうか。根本の方法論は保ちながら、もう片方のバンドの方法論もその上で活かすようにして音楽を作っていった、なんて。
そして、そう思って聴いてみると、このアルバム、それまでのパーラの作品(特に初期)と比してなんとも音がスカスカに思えます。特に、ストイックに反復するビートはほんとに必要最小限といった感じで、それまでのパーラに比べてあまりにスッキリしすぎているくらいです。
ブラスも今までどおりフィーチュアされていますが、全面に出されているのはベース/ドラムというビート形成の中心楽器です。
ここには、ファンカの引き算的な方法論や、核であるバンドサウンドの強調という理念が導入されたと見ることができるのではないかと思うのです。おかげで、だらだらと演奏を引き伸ばしがちだった部分がタイトにまとめあげられた、とも言えるかもしれません(笑)
強力なヒット・シングルである1曲目や6曲目は勿論のこと、10分を超えるような2曲目、4曲目もあっという間に終わってしまうかのように錯覚するのは、核となるファンク・ビートが今まで以上に強調され、ソング・フォームが明確になってきたからであり、「無駄なものをそぎ落とし、そこに贅沢な装飾を施す」という矛盾した方法論が、パーラとファンカの音楽性が混ぜあわさることで徐々に実現し始めたと言えるのではないでしょうか。
そしてそれにより、ファンクが本来持っていた漸進運動(ブルースの係留感覚と違い、グイグイと強引に引っ張られ引きずられるような感覚?)を支え、ファンクそのものの音楽性を強化した、と言っても過言ではないように思います。
パーラ名義ではありますが、内容的にはパーラ/ファンカの垣根を取っ払った「Pファンクとしての新たな第一歩」こそがこの作品なのです。
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Funkadelic "Let's Take it to the Stage"

Artist: Funkadelic
Album: "Let's Take it to the Stage"
Label: Westbound
Year: 1975
Tracklist
01. Good to Your Earhole (4:30)
02. Better by the Pound (2:40)
03. Be My Beach (2:35)
04. No Head, No Backstage Pass (2:36)
05. Let's Take it to the Stage (3:32)
06. Get off Your Ass and Jam (2:00)
07. Baby I Owe You Something Good (5:43)
08. Stuffs and Things (2:11)
09. The Song is Familiar (3:05)
10. Atmosphere (7:05)
ジョージ・クリントン率いる乱痴気ファンク集団P-FUNKの片割れであるFunkadelicの7th。
1stから所属してきたWestboundでの最終作です。(この後未発表曲集が出ることにはなりますが)
P-FUNKを構成するのはこのFunkadelic及びParliamentというバンドです。
両バンドはそのメンバーの大部分にかぶりがあり、言ってしまえば「一つのバンドがやる音楽によって名義を変えている」というのが一番近いのではないかと思います。
ファンカがパーラと比べ特徴的なのは、やはりロック志向のサウンドにあります。
勿論、ぐねぐねとうねるファンク・グルーヴがベースには据えられてはいますが、それをコーラス、ブラスやシンセなどで覆い、スペーシー&オペラティックな質感を持たせたパーラと比べると、ファンカはよりダイナミズムに溢れ、泥臭いサウンドを提示し続けてきました。
初期にはサイケデリック・ロックからの影響も色濃く、ディストーション・ノイズや大胆なコラージュを取り入れたカオティックな音を出していました。「ファンカデリック」という名前も「ファンク+サイケデリック」から名付けられたと言われています。
しかし作を重ねるにつれ徐々にその音楽からは贅肉が削ぎ落とされ、ヘヴィにうねる極上のブラック・ロックを形成していったのです。
さらに、この時期のファンカにはマイケル・ハンプトンとゲイリー・シャイダーという特徴的なギタリストに加え、ブーツィー・コリンズ(ベース)、バーニー・ウォーレル(シンセ)という華形プレイヤー達が脇を固めており、ブラスが入らない分彼らのバンドサウンドがストレートに楽しめます。
一時脱退していた名ギタリスト エディ・ヘイゼルのギターが一部で聴けるのも嬉しいポイントですね。
また、ブーツィーのジミヘン激似の語りが聴ける3曲目や、バーニーのシンセ多重録音による音響作品である10曲目など、創意にあふれた作品もあり、クリントンだけでなくバンド全体の創作意欲がピークに達していることがよく分かります。
この後ワーナーに移籍した後の第1作目"Hardcore Jollies"ではまだファンカはファンカらしい音楽をやっていましたが、その次作"One Nation Under the Groove"(78年)あたりからその音楽性はParliamentと曖昧になってきます。
"One Nation..."の持つグルーブ感には確かに素晴らしいものがありますが、その音楽は開放的であると同時にどこか肩の力が抜けた、ゆったりとした「余裕」のようなものを感じるのもまた事実です。
そういう部分から見れば、75年に発表されたこの"Let's Take it to the Stage"こそがファンカの音の集大成と言えるのではないかと思います。
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Miles Davis "On the Corner"

Artist: Miles Davis
Album: "On the Corner"
Label: Columbia
Year: 1972
Tracklist
01. On the Corner/New York Girl/Tinkin' of One Thing and Doin' Another/Vote for Miles (19:56)
02. Black Satin (5:15)
03. One and One (6:09)
04. Helen Butte/Mr. Freedom X (23;18)
ジャズの帝王マイルス・デイヴィスの1972年作にして、ジャズ界きっての問題作。
カテゴリはどうしようかと思いましたがやはり「ファンク」とするのが一番近いかな、と思いました。
68年の"Miles in the Sky"以降エレクトリック楽器を取り入れ、いわゆる「電化マイルス」と呼ばれる時期に突入したマイルス。69年の"In a Silent Way"あたりから徐々にファンク的な方向性を強めていき、この作品ではひとまずの極地へと到達しました。
この時期の作品は、往年の(?)ファンが拒否反応を示すことが多い印象ですが、この作品ではその傾向が顕著な気がします。
ゴッドファーザー・オブ・ソウルことジェームス・ブラウンやスライ・ストーンから強い影響を受けたとされるサウンドは確かにファンクということもできるでしょう。
チキチキチキチキ…と、ミニマルに刻まれるハイハット(テープループかな?)や、えげつなくうねるワウギター、跳ねまわるベース・ラインとタブラやハンドクラップ、シンセやローズにシタールがポリリズミックに絡み、非常に狂騒的なグルーヴを作り出しています。
マイルスもソロをとるというよりも要所要所でブツブツと呟き、唸り、絶叫するかのようで、演奏というよりもスパイス的な「仕掛け」として機能しているように思えますね。すべての楽器が「メロディ」を放棄しているという点は実にファンク的です。
しかし、このアルバムを特徴付けているのはプロデューサー テオ・マセロによる編集でしょう。
この時期のマイルス作品の多くは彼の編集技術に依っている部分が大きく、それはこの作品も例外ではありません。
そもそも1曲目の冒頭からしたって1.5拍子が切り落とされ、唐突にカット・インしてくる形で始まります。(これが実に衝撃的!)
先程も申したハイハットのループはもちろんのこと、恐らく複数の録音を同時に流しているかのような部分が散見できます。
そのせいかアルバム全体が妙に分裂症的な空気をはらんでおり、非常にアシッド・テイストの溢れる作品になっております。初めて聴いたときはワケが分かりませんでした(汗)
ちなみにこの作品について、マイルスはJBやスライだけでなく現代音楽家として有名なカールハインツ・シュトックハウゼンからも影響を受けた、と語っていたようです。
確かに、このあまりにとりとめない世界からはシュトックハウゼンの'Kontakte'などにも通ずるような抽象性を感じる…ような気がしますが、はっきりとは理解出来ません(汗)
身体的な享楽性とそういった抽象性が同居している不思議な作品です。
「意味不明だけど気持ちいい」というよりは「気持ちいけど意味不明」といったほうがしっくりくる、なにか大きな「しこり」のようなものを残すのですが、それを解き明かそうとついつい再生してしまいます。
まさに「名盤」であり「迷盤」な作品と言えるでしょう…なんて言うとちょっと尻込みしてしまうかもしれませんが、一度は聴いてみることをオススメしますよ!
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Sly & The Family Stone "There's a Riot Goin' on"

Artist: Sly & The Family Stone
Album: "There's a Riot Goin' on"
Label: Epic
Year: 1971
Tracklist
01. Luv n' Haight (4:01)
02. Just Like a Baby (5:12)
03. Poet (3:01)
04. Family Affair (3:06)
05. Africa Talks to You 'The Asphalt Jungle' (8:45)
06. There's a Riot Goin' On (0:00)
07. Brave & Strong (3:28)
08. (You Caught Me) Smilin' (2:53)
09. Time (3:03)
10. Spaced Cowboy (3:57)
11. Runnin' Away (2:51)
12. Thank You for Talkin' to Me Africa (7:14)
[Bonus Track on CD]
13. Runnin' Away (Mono single version) (2:44)
14. My Gorilla Is My Butler (Instrumental) (3:11)
15. Do You Know What? (Instrumental) (7:16)
16. That's Pretty Clean (Instrumental) (4:12)
今回はファンクの金字塔、Sly & The Family Stoneの"There's a Riot Goin' on(暴動)"を紹介します。
ファンク、というと皆さんどのような音楽を想像するでしょうか。キレのいいカッティング・ギターやぶりぶりのチョッパー・ベース、あるいは管楽器に彩られた、リズム推しの軽快な音楽?
ところがどっこいこの作品は暗くて重いのです。
「暴動」なんて邦訳に期待して手に入れて肩透かしを食らった人も多いのではないでしょうか(汗)
Sly & The Family Stoneというと、'Dance to The Music'のようなノリのよいファンキー・ソウルとも言える作品が代表的だと思います。1969年のウッドストックなんかを思い浮かべる人も多いでしょう。
このアルバムでは何故こうも雰囲気が変わってしまったのか、というとやはりリーダーであるスライ・ストーンの麻薬中毒によるところが大きいようです。妄想に取りつかれてメンバーを殺害しようとした、なんて話もあるくらいです。まともな精神状態ではなかったのでしょう。
しかしながら、出来上がった作品はすばらしいものです。
確かに上述のように妙な雰囲気はあります。閉塞的なミックスがその雰囲気を助長しているのも間違いないでしょう。しかし、無駄なものを全て削ぎ落したかのような、スカスカでミニマルな楽曲はそのミックスのおかげである種のサイケデリアですら獲得しているのです。「サイケ」というよりはむしろ「アシッド」とも言うべきダウナーなものではありますが。今までとはうって変わった、つぶやくようなスライのヴォーカルもその雰囲気作りに一役かっていると思います。
この作品はいまだに賛否両論、といった印象が強いです。「悪くはないけど、前作"Stand!"や次作"Fresh"の方が…」なんて言説を見ることもしばしばです。
その辺りは好き嫌いの問題というのも絡んでくるので難しいところではありますが、少なくともこの作品はある一定のベクトルでは恐ろしく中毒性の高い作品であると言えます。D'Angelo "Voodoo"なんかが好きなら是非聴いてみることをオススメします。
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