Carla Dal Forno "You Know What It's Like"

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Artist: Carla Dal Forno
Album: "You Know What It's Like"
Label: Blackest Ever Black
Year: 2016

Tracklist
01. Italian Cinema (1:50)
02. Fast Moving Cars (3:31)
03. DB Rip (3:49)
04. What You Gonna Do Now? (3:55)
05. Dry In The Rain (3:27)
06. You Know What It's Like (4:05)
07. Dragon Breath (3:20)
08. The Same Reply (5:17)


ジャマイカにおけるレゲエに端を発し、移民とともにUKへと渡ったダブ。
このジャンル/方法論が彼の地で独自の発展を遂げ、あるいはレゲエと分離していった(そして90年代頃にはニュールーツとして再びレベル/反逆の世界に舞い戻った)ということについては、以前より折にふれてお話してまいりました。

そして、00年代のダブステップ/ポスト・ダブステップ/ポスト・インダストリアルを通過し、80年代のポストパンクやニューウェーヴなどの影響下にある音を現代に再構築するかのような作品を多く発表しているロンドンのBlackest Ever Blackからこの10月に発表された、才媛カーラ・ダル・フォーノによるソロデビュー作"You Know What It's Like"は、ダブがUK(特にロンドン)で独自の発展を遂げる内に、UK都市部の若い世代にとってのブルーズとして機能するようになったことを改めて証明する力作と言えるのではないでしょうか。

同レーベルより作品をリリースするアヴァン・ポップなユニットF ingers(未聴)の一員としても活動する彼女が、本作において展開するサウンドは、間違いなくダブの(あるいはダブステップ/ポストインダストリアルの)影響下にあるダークな質感と、ディープな奥行きを持っています。
「F ingersに比べるとポップ」という評を散見しますが、割と素直な歌声/メロディや、シンプルに組まれたビートなどがそういった風に感じさせる要因のようにも思えますが、これが「ポップ」か、と言われると、そう表現するには少々ヘヴィなのでは、という気もします。

確かに、ビートも歌声も素直でシンプルです。
しかし、先述の質感と奥行きを持って奏でられるビートは、どこか呪術的な民族性を孕み(一部では電子音がガムランのようにも聴こえます)、歌声はその抑揚と表情に乏しい唱法と三行詩のような歌詞構造も相まって非常にブルージーで虚無的な印象を残します。
また、本作は全8曲の収録ですが、奇数曲目は次の曲の前奏曲(あるいは前後の曲のインタールード)的に機能する不穏なインストゥルメンタルで、「2曲で1セット」という構造で4セットの話を綴るような構造になっており、それがまた独特の反復性/儀式性を作品全体に付与しているようにも思えるのです。

UK/ロンドンにおけるダブは、Burialの1stによりそのディープなレイヤー/奥行きの中に孤独が滲むという可能性を獲得し、さらにジェイムス・ブレイクの1stによりブルーズ/ソウル/R&Bの構造と歌という要素を取り入れることでそのブルーズ性を高めてきたように思います。
フォーノは、彼らの方向性を踏襲しながらも、レーベルカラーに合わせたゴシカルなサウンドを取り入れることで、「UK都市部に住まう若者のブルーズ」をより強固に表現したのだと私は思います。
実際、bandcampでBluesタグを検索すると本作が(しかも、これを書いている12/24時点ではbest-sellingの筆頭として)見つかる(=ブルースとしてbandcampに登録がある)のは、レーベルか本人は本作をブルースであると考えていることの証明でしょう。

ジェイムス・ブレイクがソウル/R&Bの世界に舞い戻っていった今、このシーン(あるのかどうかすら分かりませんが 笑)を代表するのは彼女になるのかもしれません。



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Stevie Ray Vaughan & Double Trouble "Texas Flood"

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Artist: Stevie Ray Vaughan & Double Trouble
Album: "Texas Flood"
Label: Epic
Year: 1983

Tracklist
01. Love Struck Baby (2:24)
02. Pride and Joy (3:40)
03. Texas Flood (5:21)
04. Tell Me (2:49)
05. Testify (3:25)
06. Rude Mood (4:40)
07. Mary Had a Little Lamb (2:47)
08. Dirty Pool (5:02)
09. I'm Cryin' (3:42)
10. Lenny (4:58)


ブルースの、一つの頂点と目されるスティーヴィー・レイ・ヴォーンですが、その音楽は非常に強い白人性(と言うよりは『非』黒人性)を有しているように思います。

彼と、そのバンドDouble Trouble(オーティス・ラッシュの曲名より命名)のデビュー作となった今作は邦題として『ブルースの洪水』というタイトル(ちなみに原題の"Texas Flood"はラリー・デイヴィスの楽曲から)が付けられており、それは言い得て妙であると思います。
確かに、彼の音楽はブルースが好きであるならば身悶えするようなモチーフに満ち溢れています。
スライド・ギターやウォーキングベース、そしてソロに至るまで、彼とそのバンドが出す音は完璧に『ブルース』であり、同時にとてつもない完成度を誇っており、どこをどう切っても『ブルース』であるのです。いや、「ありすぎる」と言っても過言ではないかもしれません。

本来のブルースには演奏者達の気分がそのまま反映されたような「揺らぎ」や、あるいは三行詩的な歌詞構造やミニマルな楽曲構造による係留感覚がありました。
それは非常に泥臭く、土臭く、その呪術的な魅力とは裏腹に「洗練」という言葉とは思い切り正反対の性質があったのです。

ところが、レイ・ヴォーンのブルースはむしろ完成度の高い、洗練されたものとして響きます。
80年代のテクノロジーをふんだんに使った(特にドラムやミックスに顕著な気がします)クリアな音像や、それぞれのモチーフがすっきりと整頓されることで「ソング」然とした、明快な展開を有した楽曲など、それはどこまでもブルースであるように見えながら、その実それまでのブルースでは絶対に経験できなかったような感覚を聴くものに与えることは間違いありません。

彼は白人です。つまり、本来的に黒人の、ひいては『ブルース』の外にいる人間なのです。
彼はブルースの酸い甘い全てを「クールなもの」として全肯定し、その上で自分の音楽を組み立てているため、その楽曲はブルースらしいモチーフに満ち溢れたものでありながら、ある側面ではブルースの強烈なパロディとも言うべき奇形な音楽を作り上げてしまったと見るべきでしょう。

彼のこういった姿勢は、近年であればフェラ・クティのアフロ・ビートを全肯定し、礼儀正しく継承したシェウン・クティにも似ています。
ただ、あちらは世代的に離れたことで「外なる継承者」となったわけですが、人種や国籍自体は同じ(というか親子)わけでして、文化的なバックボーンなどには共通項が多くあったのでしょう。それ故に父の音楽性をかなり正確に表現できたと思われます。
レイ・ヴォーンはかつてブルースを歌った黒人ミュージシャン達とは、世代的にだけでなく、文化的なバックボーンからしてまるきり違うのですから、その音楽性を正しく継承しようとしてもうまくいくわけはありません。
悲しいことですが、彼の類稀な研鑽と才能により生み出された作品は、絶望的なまでに「白人には(黒人の)ブルースはできない」ということを皮肉にも証明してしまっているように思います。

ただ、そのことと作品自体の面白さは全く関係ありません。
ブルース好きをうならせるようなフレーズが次から次へと飛び出し、あるいは非常にブルージーなソロへと帰結していきます。(ちなみに、ソロの配置の仕方はやはりHR/HM通過後の音楽だなぁ、って感じ)
どこまでも奇形で、「ブルースのキメラ」とでも言うべき彼の音楽は黒人的なブルースとしては非常に不自然ですが、それは裏を返せば非常に白人らしいわけでありまして、そのアンビヴァレントな魅力は確かに唯一無二です。
また、最終曲'Lenny'はむしろ「黒人のようにブルースはできない」という点を理解し、開き直ったかのような名演奏だと思います。逆に言えば、黒人にこの演奏はできないでしょうね。
ブルースの頂点というよりはむしろ「ホワイト・ブルースの終着点」とでも評すべき名作です。






Texas Flood (30th Anniversary Edition)Texas Flood (30th Anniversary Edition)
(2013/01/29)
Stevie Ray Vaughan & Double Trouble

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John Lee Hooker "Burnin'"

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Artist: John Lee Hooker
Album: "Bunrin'"
Label: Vee-Jay Records
Year: 1961

Tracklist
01. Boom Boom (3:32)
02. Process (3:49)
03. Lost A Good Girl (2:52)
04. A New Leaf (2:29)
05. Blues Before Sunrise (3:49)
06. Let's Make It (2:27)
07. I Got A Letter (2:45)
08. Thelma (3:32)
09. Drug Store Woman (2:47)
10. Keep Your Hands To Yourself (2:11)
11. What Do You Say (2:31)


「キング・オブ・ブギ」の二つ名で知られるブルース・ギタリスト ジョン・リー・フッカーが1961年に発表した作品。
ブギというのは要はシャッフル・リズムの反復構造を根幹に据えたブルース(というかブラック・ポップ)の一様式です。
彼は1940年代から、このスタイルをシンプルな弾き語りでもって表現してきましたが、1955年のヴィー・ジェイ・レコーズへの移籍以降、その音楽性をバンド・サウンドへとアップデートさせました。

軽快なビートと、切れ味の鋭いギター・カッティングやピアノが創りだす、歯切れのよいグルーヴは常に心地よいスウィング感を持っています。
まさにブルース(及びシャッフル・リズム)のダンス・ミュージック的に解釈し直し、モダナイズしたようなサウンドであり、泥臭さと同時にスマートなクールさも感じさせます。
この辺りについては、感触は多少違いますがリトル・ウォルターに近い気がします。
ただ、彼と明らかに違うのはベースのミックスでしょうか、かなりヘヴィな大音量のミックスでビートに合わせストイックに反復していく姿は、何度も言うように非常にダンス・ミュージック的です。ダブ・ミックスなんてしてみたら面白いかもしれません(笑)

ミニマルな楽曲構造と、解決感のないコード進行などにより、ブルースは出口の見えない係留感覚をその根底に有するようになりましたが、フッカーはそのミニマルな構造をより強調し、またダンス・ミュージックとしての側面を強化するためにバンド・サウンドを選択したのだと思われます。
複数楽器による音の厚みが、反復構造にさらなる力を与えていることは間違いないでしょう。それは名曲の再演である1曲目を聴いてみても明らかです。
ちなみにこの作品でのバンド・メンバーは、一説によればモータウンのミュージシャンだそうですが、そのせいもあってかR&Bテイストは同時期の他の作品よりも強く、彼がブギ・スタイルで目指した理想形が提示されているのではないかと思います。



↑'Boom Boom'はこのアルバムのテイクが見つからなかったので、同じく強烈なダンス・チューンであるこれを紹介します。



Burnin'Burnin'
(2007/03/27)
John Lee Hooker

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Otis Spann "Walking the Blues"

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Artist: Otis Spann
Album: "Walking the Blues"
Label: Candid
Year: 1972

Tracklist
01. It Must Have Been the Devil (3:47)
02. Otis' Blues (4:19)
03. Going Down Slow (4:00)
04. Half Ain't Been Told (4:41)
05. Monkey Face Woman (4:58)
06. This is the Blues (3:10)
07. Evil Ways (3:53)
08. Come Day, Go Day (4:13)
09. Walking the Blues (4:58)
10. Bad Condition (4:24)
11. My Home is in the Delta (3:13)


マディ・ウォーターズ・バンドのメンバーにしてシカゴ・ブルーズの名ピアニスト オーティス・スパンが1960年にCandidに吹き込んだ作品。(発表は死後の1972年)
盟友ロバート・ロックウッドJr.(あのロバート・ジョンソンのギリの息子!)とのデュオによる、ピアノとギターのみのシンプルな録音です。(3,5,8,10曲目にはセントルイス・ジミーがVoとして参加)

シカゴ・ブルーズというと、マディ・ウォーターズなどに代表される、バンド形態でのモダンかつスウィンギーな演奏が印象的ですが、このアルバムはその編成のシンプルさも手伝って、まるでデルタ・ブルーズに回帰したかのように素朴で、かつブルーズの芯の部分を抽出したかのような濃い作品に仕上がっています。

ただ、オーティス(およびロックウッド)の演奏スタイルはやはりシカゴ・ブルーズ以降のそれですね。
ロックンロールにも通ずる、聴き手を挑発するかのような激しい連打や軽やかなスウィング感覚などはモダン・ブルーズ以降のセンスを強く感じさせますね。

また、オーティス自身の歌声も魅力的です。
ちょっととぼけたような、輪郭のはっきりしない太い歌声はこういったシンプルで音数の少ない演奏の中では実に力強く響きます(ゲストのセントルイス・ジミーも同系統の声で、こちらも非常にはまっています)

ブルーズ、というとどうしてもギターやハープが主役なイメージがありますが、ピアノの音色でもこれほどにドロドロのブルーズができる、というのは非常に素晴らしいと思います。『ブルーズを引きずりながら歩く』とでも訳すべきタイトル通りの作品です。
ピアノ・ブルーズに興味がある方はぜひ聴いてみてください。






Walking the BluesWalking the Blues
(2001/11/05)
Otis Spann

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Little Walter "The Best of Little Walter"

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Artist: Little Walter
Album: "The Best of Little Walter"
Label: Chess
Year: 1958

Tracklist
01. My Babe (2:44)
02. Sad Hours (3:15)
03. You're So Fine (3:07)
04. Last Night (2:46)
05. Blues with a Feeling (3:10)
06. Can't Hold out Much Longer (3:03)
07. Juke (2:47)
08. Mean Old World (2:57)
09. Off the Wall (2:52)
10. You Better Watch Yourself (3:04)
11. Blue Lights (3:14)
12. Tell Me Mama (2:47)


ブルーズ・ハーピスト リトル・ウォルターの1stアルバム。
「Best」の名を冠していますが、当時アルバムというものはヒットシングルの寄せ集めであったわけでして、そのためこのようなタイトルになったようです。

彼はアンプリファイド奏法(ハープと一緒にマイクを手の中に包み込み、アンプを通してハープの音量を増大させる方法)を録音に持ち込んだ初めての人物です。
その暴力的とも言えそうなほど鋭いハープの音はこれから後のシカゴ・ブルーズにおけるハープ・サウンドの基本となっていきました。

サニー・ボーイ・ウィリアムソンⅡにハープの手ほどきを受け、またシカゴに移ってからはシカゴ・ブルーズの大親分マディ・ウォーターズのレコーディングにも参加していた彼ですが、そのサウンドはそれら偉大なる先駆者達とは多少趣が変わっています。

一言で言えばクールなんですね。
ギタリスト ウィリー・ディクソンのカヴァーである1曲目からしてとても軽やかにスウィングしており、R&Bやジャズからの影響を感じさせますし、4曲目ではポリリズミックにからむギター・ベース・ドラムの演奏を掻い潜るように滋味深いソロを聴かせてくれます。
もちろん、むせ返るような土臭さ(ブルーズ臭)には満ちていますが、それだけでなくとてもスマートなかっこよさがあります。先程も言ったように、R&Bやジャズの影響を受けながらブルーズそのものを見事に洗練させているのです。

土臭さとクールネスのバランスが絶妙で、非常に聴きやすいのでブルーズ最初の一枚としてもかなりおすすめです。






ベスト・オブ・リトル・ウォルター+3ベスト・オブ・リトル・ウォルター+3
(2004/08/25)
リトル・ウォルター

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