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Claire M Singer "Solas"

clairemsingersolas.jpg


Artist: Claire M Singer
Album: "Solas"
Label: Touch
Year: 2016

Tracklist
Disc 1
01. A Different Place (6:35)
02. Ceó (5:39)
03. Solas (10:50)
04. Diobaig (4:47)
05. Eilean (11:36)
06. Wrangham (6:47)

Disc 2
01. The Molendinar (25:57)
02. Aisir (14:46)
(Disc2-2はDL限定のボーナストラック)


ロンドンのユニオン・チャペルを拠点としてパフォーマンスやワークショップを行っている女性作曲家クレア・M・シンガーのデビュー作(なんと2枚組)がTouchよりリリースされました。
Touchからのリリースということですが、思ったより自分の周囲で話題になっている雰囲気もなく、彼女自身の経歴もはっきり分からなかったこともあってどのような作品になるのか期待半分不安半分といったところでしたが、繊細で神秘的、そしてメロディアスなコンポジションと、重厚にレイヤーされた音が非常にマッチした充実作となったように思います。

本作は、彼女がここ14年間の間に作曲した作品をまとめたものです。
特に近年、彼女の興味の中心はユニオンチャペルの1877年ヘンリー・ウィリス製のオルガンとチェロ、そして電子音との混交/交錯にあったようで、本作で聴かれる楽曲でもそれらの3つの音を駆使しています。

まずもって、ディスク1の1曲目'A Different Place'からして素晴らしいです。
シンプルでありながら(あるがゆえに?)、冷徹なまでの美しさを有した旋律をチェロが反復し、そこには更にチェロの多重録音が重ねられていきます。
主旋律とポリフォニックな関係を持つドローン状のラインと、軋むように歪みながら、一定の拍節感を生じさせる低音のラインという2種のラインを絡めた上で繊細に電子音が挿入されるわけですが、この7分弱の間、英国/北欧らしい寒々とした空気があたりに充満する様な気分を味わえます。

その他、長大な表題曲'Solas'などではオルガンか重ねられていますが、神秘性/霊性を孕みながら音が上り詰めていくかのような響きはそれだけで非常にパワフルですし、他の曲ではエレクトロニクスによる低音ドローンを主軸に、チェロなどの幽玄な旋律をうっすらと重ねることで、スピリチュアルな雰囲気を漂わせています。
基本的には音のレイヤーとテクスチュアに主眼を置いたポストクラシカル系の作品ということができると思うのですが、非常にコンポジション(というかメロディ)が見事なために、長尺の楽曲でもとても聴きやすく、音がすぅっと体に入ってくる、またはこちらの意識がすぅっと楽曲に没入していくような感覚を覚えます。

その原因としては、彼女のコンポジション自体が見事なことももちろんだとは思いますが、何より音のレイヤーの仕方、アレンジメント/パワープレイが非常に巧みであることが、本作の魅力をより一層際立たせているように思います。
DLボーナス曲も含めると90分近くもある大作なのですが、聴き始めると結構あっという間で、美しい音響とその重なりに耳を傾けているだけで時間があっという間に過ぎてしまいます。
個人的には1曲目'A Different Place'や3曲目'Solas'、5曲目'Eilean'など美しくて好きですが、最も好きなのは霊性/神性とある種の感傷のようなものが同居したメロディ/コードがスピリチュアルに美しすぎる6曲目'Wrangham'がイチオシです。

以前紹介した、サイモン・スコットの"Floodlines"と合わせ、ドローン愛好家やTouchファンにはマストと言える作品だと思います。


01. A Different Place


06. Wrangham
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Simon Scott "Floodlines"

simonscottflood.jpg


Artist: Simon Scott
Album: "Floodlines"
Label: Touch
Year: 2016

Tracklist
01. Floodlines (30:51)


UKのケンブリッジ出身で元(現?)Slowdiveのサイモン・スコットの新作がTouchより発表されました。
彼のTouchからのフィジカル・リリースは今回が初となります。
昨年の"Insomni"がなかなかの好評を得ていたように記憶していますが、私自身はあの作品は未聴でして、彼の作品を聴くのは2012年に12Kから発表された"Below Sea Level"以来4年ぶりです。

さて、本作は今年の1月末にロンドンのCafe OTOで催されたTouchイベントでの演奏を(そのまま?)収録したものです。
"Below Sea Level"では故郷ケンブリッジを含むフェン地方の沼沢地を想起させるサウンドスケープを聴かせていましたが、今作もそのタイトル(Floodlines=警戒線/警戒水位)が示す通り、水や自然に関係のある作品ということができそうです。

作品は、呪術的なドローンを中心として進んでいきます。
そこに、おそらくフェン地方で採録したものと思しきフィールドレコーディング素材や、かつての経歴(Slowdive近辺)を想起させるようなフィードバックノイズ、無機質で暴力的な電子パルスが重ねられ、まるでジム・オルークによるエレクトロ・アコースティック/ドローンの名作"disengage"にも似た、水に対する(あるいは溺れることに対する)恐怖に端を欲する、終わり(死)に向かっていく感覚を強く感じさせる作風になっています。

正直、これだけでもかなりの名作だと思うのですが、作品は20分前後から徐々にその様相を変容させていきます。
鳥のさえずりなどの麗しいフィールドレコーディングが徐々に加わり、粘度が高そうだった水音はサラサラとした爽やかなものに変わっていくのです。
そういった音に気を取られているうちにドゥーミーなドローンはいつの間にか消え去り、次はベルのような音色に導かれるように浮遊感の強いドローンがフェードインしてきます。
そこにはストリングス風のドローンや冷ややかなサウンドスケープ、さらにはシンセと思しきメロウなフレーズ(とても控えめですが)なども加わり、前半とは打って変わって天国的/霊的な美しさを漂わせていきます。

数回聴いた時点では前半の印象に引っ張られて恐怖やディストピア感ばかりが先行していたのですが、レーベルの解説にある以下の文が本作の真の魅力を捉えるのにとても役に立ちました。

The ecosystem was damaged but these areas have been left to reflood and re-establish it’s vernacular wildlife, replete with its own instrumentation and orchestras.

(生態系は損なわれ、この地域に残された道は再冠水で土地特有の野生を再建することである。[そして野生の再建とはすなわち、土地]自身の楽器法や楽団で[土地を]満たすことである)


拙い訳で申し訳ないのですが、要は本作はタイトル通り洪水をモチーフとしていますが、それは人々を溺れさせ、死へと誘う恐怖の象徴でなく、環境をリセットし、自然/野生を再生させるものであるのだ、ということだと思います。
そう思いながら後半(特にラスト8分程度)を聴くと、恐怖しか感じなかった前半が嘘のように希望に満ち溢れた、まるで交響曲の大作のエンディングのように荘厳な雰囲気が感じ取れるのです。

ここ数年ドローン的なものに対する興味が薄れているのを自分でも感じていたのですが、本作には物凄く引きこまれています。
2012年の"Below Sea Level"に並ぶ、もしかするとそれを超えるかもしれない名作であると断言できます。
エクスペリメンタル/ドローン愛好家にはマストです。


レーベルのショップページで一部視聴可

Jim O'Rourke "Happy Days"

happydays.jpg


Artist: Jim O'Rourke
Album: "Happy Days"
Label: Revenant Records
Year: 1996

Tracklist
01. Happy Days (47:32)


90年代以降のポスト・ロック/アヴァン・ポップ/エクスペリメンタル・ポップ等々の牽引者、ジム・オルークが96年にジョン・フェイヒィのレーベル レヴェナントより発表した作品。

詳しい方はすでにご存知ではあると思いますが、初期~この時期のオルークにとっては「ミニマリズムの探求」がその音楽の大きなテーマの一つであったと思います。
フリー・インプロヴィゼーションなどももちろんあったでしょうが、循環するようなエレクトロ・アコースティック/ドローン・ミニマリズム("disengage"などのソロ作品や、昨今発掘されているクリストフ・ヒーマンとの作品群、トニー・コンラッドFaustとのコラボレーションなど)は彼の音楽性の根幹にあるものでした。

しかし、この時期くらいからある志向性が目立って表出してきます。
それはすなわち「アメリカーナ」いわゆる「アメリカ的な音楽」への回帰志向です。
この前後に発表される作品を見てみると、"Eureka"は明らかにヴァン・ダイク・パークスブライアン・ウィルソンによる、アメリカン・ルーツ・ミュージックのパラノイアックな桃源郷("Song Cycle"や永遠の未完アルバム"SMiLE")の模倣あったし、方や"Bad Timing"やGastr del Sol名義での傑作"Upgrade & Afterlife"の最終曲では今作のレーベル・オーナー ジョン・フェイヒィのカントリー/ブルーズ・ミニマリズムを礼儀正しく取り入れました。
特に"Bad Timing"はその二つのアメリカーナが溶け合った作品としてとることもできるように思います。

そして、その前段階として発表された今作は、後者のカントリー/ブルーズ・ミニマリズムと、初期のドローン・ミニマリズムを融合させた、彼のディスコグラフィの中でコレ以前と以降とを分ける一点として機能する作品であると言えます。

最初の10分程度はジョン・フェイヒィへのトリビュートとでも言うべき、端正で礼儀正しいミニマル・ギターが淡々と紡がれます。
そこに侵食してくるのは、ヨーロッパの民族楽器ハーディ・ガーディによる循環ドローンです。
徐々に徐々に音量を増していく、凶暴な音の塊は、低音がぐわんぐわんと唸りながら空間を埋め尽くし、ぐるぐると回り続け、ウワモノ(といっていいのかどうか…)的な部分の発生させるドローンが、トニー・コンラッドのドローン・ヴァイオリンにも似たうねりを生み出しながらジリジリと歪み、ノイズを発生させていきます。(特に38分頃からの圧倒的なノイズは圧巻)
恐らくハンドルを回す仕草と連動していると思われる有機的なループは、初期のような循環性を有しながら、同時に雄大で懐の広い、深い精神性を帯びており、神聖さのようなものすら感じさせるのですから不思議です。

そしてラストにはまたアコースティック・ギターの端正な響きが静かに呼び戻され、48分弱の楽曲は幕を閉じるわけですが、聞き終わる頃にはそれがとても長い、過去への(精神的な)旅であったと感じるのではないでしょうか。
彼がこの作品を『幸せな日々』と冠した気持ちも、なんとなく分かるというものです。(内ジャケットには彼の幼少期と思われる写真が)
初期のドローン・ミニマリズムを、ジョン・フェイヒィ的なアメリカン・ミニマリズムで挟みこむことにより、「追憶のためのドローン作品」として成立せしめるそのセンス、改めて脱帽です。傑作!






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(2009/09/16)
ジム・オルーク

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Pärson Sound "Pärson Sound"

Pärson Sound

Artist: Pärson Sound
Album: "Pärson Sound"
Label: Subliminal Sounds
Year: 2001 (Recorded: 1967-1968)

Tracklist
[Disc 1]
01. Intro (0:53)
02. Tio Minuter (Ten Minutes) (10:29)
03. From Tunis to India in Fullmoon (On Testosterone) (20:29)
04. India (Slight Return) (13:06)
05. A Glimpse Inside the Glyptotec-66 (6:01)
06. One Quiet Afternoon (In the King's Garden) (10:32)

[Disc 2]
01. Sov Gott Rose-Marie (13:18)
02. Skrubba (28:56)
03. Milano (7:57)
04. On How to Live (7:26)
05. Blåslåten (5:41)


スウェーデン出身のサイケデリック・ロックバンドPärson Soundのラジオ番組におけるセッションやライヴなどの音源をコンパイルした編集盤。
このバンドは正式にはアルバムを残しておらず、これが唯一の音源のようです。

いずれも67~68年にかけて録音された音源であり、時代の流れからも分かるとおりのサイケデリック・サウンドです。
どの楽曲もミニマリスト テリー・ライリーからの影響が強いミニマルサウンドとヴァイオリンなどによるドローン、そしてフリーキーな即興演奏/ジャムといった3つのパートを根幹として有しており、その間をふらふらと行き来するサウンドは、聴き手を徐々に異世界へと誘いこんでいきます。

テリー・ライリーにリンクしていることからも明らかですが、ラ・モンテ・ヤングトニー・コンラッドそしてジョン・ケールアンガス・マクリースなどの永久音楽劇場の面々の演奏するアヴァンギャルド・サウンドに通ずるところが多いです。
また、フリーキーな即興演奏はドイツのAmon Düül(特に1st"Psychedelic Underground")のようにカオティックです。Düülの1stが69年ということを考える、もしかすると影響元の一つなのかもしれませんね。

あの時代特有の、前衛的なものに対する憧憬が全編に充満した、素晴らしい発掘音源ではないかと思います。






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(2010/08/17)
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Nurse With Wound "Salt Marie Celeste"

1812624.jpg

Artist: Nurse With Wound
Album: "Salt Marie Celeste"
Label: United Dairies
Year: 2003

Tracklist:
01. Salt Marie Celeste (61:58)


Nurse With Woundは1978年より活動しているUKのポスト・パンク/インダストリアル/ノイズ/アヴァンギャルド・ユニットで、最初期にはバンドとして活動していた模様ですが、5th"Homotopy to Marie"より実質中心人物スティーヴン・ステイプルトンのソロユニットとなります。

時期により色々な音楽性を見せる…ような見せないような(笑)ユニットなのですが、基本的にはコラージュとドローンの二本柱を主軸に音楽を展開していると言えるでしょう。

今回紹介する"Salt Marie Celeste"はドローンを主軸にした作品です。
また、名前からも分かる通りかの有名な「幽霊船マリー・セレスト号」を題材としています。
ミステリアスな空気を多分に孕んだドローンが静かに唸るなか、コラージュされた幽霊の呻き声が怨嗟のように響き、何かが右へ左へと転がり、木材が軋み、そしてついには船が海の中へと潜るように沈んでいきます。

非常に終末感や孤独感に溢れた作品であり、一人でゆっくり浸りながら聴くと、一時間終わる頃には非常に充実した気分になりますね(笑)「いやぁ~ドローン聴いたなー」みたいな。

水を想起させるドローン、というとジム・オルークの初期作(特に"disengage"あたり)が思い浮かびますが、その辺りが好きな人にはどストライクな作品であることは間違いないでしょう。
NWWの入門としても結構オススメです。





Salt Marie Celeste (Reis) (Dig)Salt Marie Celeste (Reis) (Dig)
(2005/11/22)
Nurse With Wound

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