Félicia Atkinson "Hand in Hand"

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Artist: Félicia Atkinson
Album: "Hand in Hand"
Label: Shelter Press
Year: 2017

Tracklist
01. I’M FOLLOWING YOU (3:43)
02. VALIS (6:40)
03. CURIOUS IN EPIDAVROS (3:04)
04. ADAPTATION ASSEZ FACILE (3:46)
05. MONSTERA DELICIOSA (5:04)
06. VISNAGA (5:18)
07. A HOUSE A DANCE A POEM (10:44)
08. HIER LE DÉSERT (6:33)
09. VERMILLIONS (5:04)
10. NO FEAR BUT ANTICIPATION (7:49)


フランスの音楽家フェリシア・アトキンソンがShelter Pressより発表した新作"Hand in Hand"は、そのサウンドの前衛的な響きや楽曲構造の抽象性とは裏腹に、歌心をもったポップ・アルバムと表現しても間違いはなさそうな、不思議な風通しの良さを感じる作品となったように思います。

本作は、彼女によるモジュラー・シンセのサウンドと言葉(8曲目では女優のエリーゼ・ラデュエーÉlise Ladouéも参加)で成り立っています。
ずんやりと重々しい感覚を残す低音、ふわふわと浮かんでは消えていくアトモスフェリックなサウンド、そしてインダストリーな質感を湛えた残響や気味悪くうごめく音塊の中でつぶやかれる言葉は、完全に話し言葉でメロデイなどはなく、また、朗読のような感情のこもった雰囲気もない淡々としたもので、どこか虚ろな印象を受けることでしょう。

こう表現すると、難解な作品に思えるのですが、聴いていると案外そうでもないことに気付かされます。
確かに、アトキンソンの声は感情に乏しいがゆえに、こちら(聴き手)の感情を刺激したり、煽ったりするようなことはありません。
ただモノローグのように流れながら、左右それぞれから別々に録音されたものが発せられ、重なって幻惑的に響き、最後は夢のように消え入ります。

その言葉が載せられる土台となる音/楽曲もぽつりぽつりと途切れたと思えばまた始まり、また低音域・中音域・高音域・装飾音それぞれが無関係に鳴る、虚ろなものなのですが、繰り返し聴いている内にパルス(拍節感)というか、リズムがあるように思えてきました。
音同士が偶発的に絡まり、変化していくことで即興的な空気も強く感じられはするのですが、どことなく一本芯が通っているような気が全編通してしてくるのです。

音と音とが関係性を放棄している様には、オーレン・アンバーチの初期作("Grapes from the Estate"とか)のような感触もありますが、本作は言わばそういった作品を『ポップに再構築するなら』というifのように聴くことができます。
もちろん、全編通してある虚ろな感触が、私のアシッド・フォーキーな嗜好と合致した、という部分もあると思いますが(笑)

なにはともあれ、かなりの良作だと思います。
この界隈の音が好きな方は聴いて損はないでしょう。


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Phornesis, Julian Argüelles & Frankfurt Radio Big Band "The Behemoth"

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Artist: Phornesis, Julian Argüelles & Frankfurt Radio Big Band
Album: "The Behemoth"
Label: Edition Records
Year: 2017

Tracklist
01. Ok Chorale (3:49)
02. Untitled#1 (6:58)
03. Stillness (9:08)
04. Herne Hill (4:54)
05. Charm Defensive (6:36)
06. Zieding (9:45)
07. Phraternal (6:53)
08. Intro to Urban Control (2:48)
09. Urban Control (7:45)
10. Happy Notes (6:06)


UKの誇る武闘派(?)ピアノトリオPhronesisの新作はサキソフォニストのジュリアン・アーギュレス率いるビッグバンドとの共演により、過去の名曲の再構築を図ったものとなりました。
例外的に8曲目のみ新曲ですが、こちらはアントン・イーガーとアーギュレスの共作とされているものの、タイトルを見ても分かる通り9曲目の前奏曲であり、完全な意味での新曲とは言えないと思います。(リアレンジの範疇というか)

彼らは今まで、3人での抜き差しならぬ、緊張感溢れるインタープレイをその第一の魅力としてきましたが、その裏には常にどこかクラシカルで雄大なメロディ/ハーモニーが備わっていたように思います。
1曲目、昨年の名作"Parallax"の前半で優雅な旋律を聴かせてくれた、アイヴォ・ニームによる'Ok Chorale'からアルバムはスタートしますが、冒頭からその隠れた魅力がいつも以上に押し出されていることがわかるはずです。

ビッグ・バンドのブラスによりハーモニーが補強され、もともと印象的だったメロディの美しさがより生々しく迫ってくるように思えます。
もちろん、アントン・イーガーの複雑なリズムとアイヴォ・ニームによる込み入った旋律、そしてジャスパー・ホイビーによるヘヴィなベースもその重厚なハーモニーに負けず劣らずの活躍を随所で見せており、ビッグバンドとメンバー3人による四つ巴の戦いのような雰囲気もあるのですが、今回は楽曲の魅力に重点をあてるためか全体的には抑制の効いた演奏となっているため、とても取っ付き易い作品になっているように感じます。

ハイライトは先行でも公開されていた6曲目'Zieding'でしょう。
楽曲のエモーショナルな展開と、ビッグバンドのハーモニーが非常によく合致したアレンジとなっており、非常にドラマティックな楽曲に生まれ変わったと思います。
この1曲だけでもこのコラボレーションの間違いのなさは十分に証明されていると言えそうです。

これからPhronesisを聴こうという方には、メロディアスな取っ付き易さという点で最初の一枚にオススメできますし、これまでPhronesisの作品に触れてきた方には彼らの新たな魅力を提示してくれるという点で必携の一枚といって過言でないと思います。


2017年5月の新譜

Dale Cornish "Aqal" (Entr'acte)


Félicia Atkinson "Hand in Hand" (Shelter Press)


Gosheven "Leaper" (Opal Tapes)


Knivtid "Knivtid EP" (ACR)


Loke Rahbek "City of Women" (editions Mego)


Slowdive "Slowdive" (dead Oceans)


tricot "3" (BAKURETSU RECORDS)

The Best 10 Discs of Jan.-Mar. 2017

こんばんは。
4月ももう終わりということで、すでに1年の3分の1が終わるということに戦慄せざるを得ない今日此の頃、いかがお過ごしでしょうか。
今年も新譜中心のリスニングを、と言いながらレゲエ(というかジャマイカ音楽)だのサイケだの掘りたい欲が出てきてしまって少しばかり新譜がおざなりになっている状況ですが、第一四半期のベストを発表します。

どのみち年末には順位つけるので、順位なしで10作品、という紹介にします。

The Necks "Unfold" (Ideologic Organ/LP)
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Taylor Deupree "Somi" (12K/CD)
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Gábor Lázár "Crisis of Representation" (Shelter Press/LP)
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Oto Hiax "Oto Hiax" (editions Mego/LP)
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Andrea Belfi "alveare" (IIKKI/LP)
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Arto Lindsay "Cuidado Madame" (P-Vine./Ponderosa/CD)
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Helm "Rawabet" (A L T E R/Cassette)
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Phronesis, Julian Argülles & Frankfurt Radio Big Band "The Behemoth" (Edition Records/CD)
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Basic Rhythm "The Basics" (Type Recordings/LP)
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The Bug vs. Earth "Concrete Desert" (Ninja Tune/CD)
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全体的にテクノ/エレクトロニカ/電子音楽にモードが傾いております。(その割に旧譜はサイケとかレゲエ、というのもまた不思議)
まだレビューが間に合っておりませんが、PhronesisやBasic Rhythmは相変わらず高レベルな内容で非常に良かったですし、トラップ/グライムmeetsストーナー/ドゥーム/ドローンというフォーマットでの決定的なコラボとなったThe Bug vs. Earthも素晴らしく、昨今のNinja Tuneの尖りっぷりがよく現れていると思いました。
あと個人的に嬉しかったのはテイラー・デュプリーやOto Hiaxの作品などに00年代初頭の頃のエレクトロニカっぽい雰囲気が強く感じられたことです、10年以上経ったことで、また揺り戻しがくるのかも、と予想しています。

その他、Son Luxのサポートを一身に受けて充実した作品となったyMusic、いかにもこの2人らしいコラボ作となったカセル・イェーガージム・オルークの共作、あるいはクレイグ・テイボーンの久々のECM作品やティグラン・ハマシアンのソロ、SubtextやEntr'acteといった尖ったレーベルからディストリビュートされたジョシュア・サビンフィル・ジュリアンといった電子音響作家の新作、そして水曜日のカンパネラのメジャー1stアルバムなど、素晴らしい作品が目白押しで、今年の年間ベストも混戦が予想されます。

とりあえず、近況報告代わりに。
PhronesisやBasic Rhythmのレビューもいずれしたいと思ってますのでお待ちください!

The Necks "Unfold"

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Artist: The Necks
Album: "Unfold"
Label: Ideologic Organ
Year: 2017

Tracklist
01. Rise (15:33)
02. Overhear (16:17)
03. Blue Mountain (20:58)
04. Timepiece (21:47)


オーストラリアの誇る即興トリオThe Necks
結成は1987年ということでなんと今年で結成30周年にもなる大御所ユニットなのですが、私が知ったのは実は最近でして、昨年の初来日に絡んで名前を見ることが多くなった、というのが切欠でした。
(一応、以前ドラマーのトニー・バックがFenneszと共演した盤を聴いたことはありましたが、The Necksの人なんて意識してもいませんでした 汗)

来日公演には行けませんでしたが、editions Mego傘下で、ステファン・オマリーが主宰するIdeologic Organより2017年早々に新作が発表されることを知ったのと、バンド自体になにか惹かれるものを感じたのもあり、ReRより数年前に出ていた過去8作を集めたBOXを年末に購入して(あとは年明けに2013年の"Open"も購入して)新作を迎える準備を着々と進めておりました(笑)
本作は1stプレスが発売前に売り切れ(eMegoのサイト見に行ったらSold Outの文字が…)てしまい、焦ってBoomkatで確保しましたが、なんとか手に入ってよかったです。(3月に再プレスがかかったようです)

さて、本作について述べる前に、まずはThe Necksの基本的なスタイルについて述べることとしましょう。
彼らが根本に有するのは「即興演奏」「ミニマリズム」の2点で、これは彼らの作品のどれを聴いても意識する要素だと思います。
ドラムスとベース、そしてピアノがストイックに反復しながら徐々にそのフレーズを変化させていき、殆どの作品において、1時間もの長い時間を使って演奏が上り詰めていく様がはっきりと聴き取れます。
これまで"Unfold"を含め10作を聴きましたが、個人的にこの方向性で最も好きなのは2003年の"Drive by"でした。
繰り返しますが本当にストイックな反復をベースとして、その上で丁寧に音を変化/レイヤーさせていくことで生じる高揚感には他では得難いものがありますし、その演奏はしなかさと共にどこかはっきりとした輪郭を持っており、クラウトロックなどとも比較できるような硬質な魅力もあったように思います。

しかしながら、彼らはその作風を2000年代後半から徐々に変化させていき、そしてそれは2010年代に入ってだんだんと顕著になっていきます。
それを私が強く意識したのはやはり後で手に入れた"Open"でした。
一聴してまず感じたのは「禅」の様な感覚というか、今までのストイックな反復によるディシプリンがもたらす明確な輪郭線が融解し、もっと抽象的で流動的な「空気」を醸しつつも意識が一処に集中するような、メディテーティヴな感覚でした。
"Open"ではメロディにラーガのようなスケールを聴き取れたため、そこに起因した印象かな、と思っておりましたが、今作ではそれがさらに突き詰められ、頂点を迎えているように思います。

なによりも変化したのは、もはや彼らは明確なフレーズの反復を行っていない、という点だと思います。
ドラムが土台となるパルス/グルーヴを発信し、そこにベースが明確なリフの反復(「リフの反復」って妙な言葉ですが 笑)でもってグルーヴを強化し、ピアノが同じく反復しつつ音響的な装飾を施す…という、反復を主体とする即興演奏におけるある種の暗黙の了解を完全に拒否しているのです。

彼らは互いの演奏、一挙手一投足にまで集中し、他の2人の演奏に最適な答えをリアルタイムで返し続けます。(もちろん、今までの作品同様オーヴァーダブでレイヤーされた部分もあるのでしょうが)
いわゆるインタープレイで楽曲を構築していく様は、(私自身はThe Necksのことをジャズ・バンドとはあまり思っていないのですが)まるでビル・エヴァンス率いるピアノトリオが(シンセやオルガンなども用いつつ)フリーミュージックを演奏したら、というifのようにも聴き取れますし、また、本作のリリース元であるIdeologic Organ絡みでは、レーベルオーナーのオマリーが灰野敬二、オーレンアンバーチと組んだNazoranaiや、あるいはメンバーの共通から灰野/オルーク/アンバーチのトリオの演奏なども(熱量自体は違いますが)思い浮かぶ気がします。

本作は彼らにしては珍しく(?)15~20分程度のコンパクトな曲が並んだ作品となりましたが、時間感覚を希釈し、逆に濃縮するような感覚は今までで最も強いように思います。
今年の新作ではかなり上位に食い込んできそうです。


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